賢人100人に聞く!日本の未来#33

元外交官の宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は、コロナ禍で以前からの流れが加速し、国際情勢が“劇症化”していると分析。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#33では、同氏に安全保障能力を急速に増強させている中国への対抗策などについて考えを聞いた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

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コロナで“劇症化”する国際情勢
中国の軍事増強で安保環境が激変

──新型コロナウイルスは、国際情勢や安全保障環境の変化にどう作用したと考えますか。

 疫病の歴史は、破壊の歴史でもあります。当然コロナもそうであり、どの国に対しても容赦なく、見境なく、破壊を行うのが疫病の本質です。疫病が新たな国際情勢をつくるのではない。しかし破壊することで、既にあった流れが加速し、多くの場合、劇症化します。そこで以前から起きていたことを振り返ると、やはり大きな流れとして中国の台頭、そしてトランプ米大統領が就任して以降の米国外交の混乱があります。

 米国はこれまで、最新鋭の武器システムを大量に中東に投入し、規模として格下の過激派組織アルカイダや「イスラム国」とゲリラ戦を行って勝利してきました。ところがその間に中国は、高価で人手がかかり動きが鈍い米国の軍事システムの弱点を突く形で、廉価で命中率が高く、無人で長距離攻撃できる武器を大量導入しました。こうした動きが、東アジアの安保環境を大きく変えつつあります。

 つまり、中国は以前から経済的な力を増大させてきたわけですが、この5年ほどで、安保分野でも東アジアを中心とした地域では米国の軍事能力にチャレンジし、一部は凌駕する力を持つようになった。これが、安保分野での国際情勢の一番大きな変化です。

 米国が弱くなったというよりも、米国は新しい戦い方に移行するのをサボり、本当の意味で大国間の覇権争いが始まっていたことに気付いていなかった。そして、「関与」によって中国を変化させられるという幻想に基づいてきた30年間が終わりつつあった。そんな状況下でコロナ禍が訪れ、通常なら10年単位の長期で起こる変化が、急速に劇症化している今があるわけです。

──安保環境が厳しさを増す中で、日本はどのように振る舞っていくべきだと見ていますか。