特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#34では、英誌「エコノミスト」元編集長で、知日派として名高い国際ジャーナリストのビル・エモット氏が日本経済を分析。同氏はアベノミクスを「40点」と辛口に評価しつつ、日本は「アジアのスイス」を目指すことで輝きを取り戻せると強調する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
アベノミクスは「40点」
家計収支の在り方に問題
――アベノミクスを100点満点で評価すると何点ですか。
40点程度でしょう。安倍晋三首相は7年以上務めましたが、日本の経済は脆弱であり、成長率の長期的な改善傾向や家計の実質所得の増加が見られなかったからです。
彼の在任期間中、日本の経済状況は低位安定していました。2019年の最後の四半期まで不況といえる状況ではなく、外部環境の大きな悪化もなかった。そして持続的成長の結果、失業率は過去最低となり、少なくともデフレの状態からは脱しました。ただ昨年10月の消費増税後の動向を見ても分かるように、日本経済は既に脆弱な状態でした。そこにコロナ禍が訪れ、状況を悪化させました。
――消費増税を巡る国民の反対意見も激しくなっています。最近ではMMT(現代貨幣理論)のような論調も注目されていますが、日本の消費税の在り方についてはどう考えていますか。
日本はいわゆるMMTの主要な活用者であると思います。個人的には、MMTを「現代」と呼ぶのは誤解を招くと考えており、これは昔からある金融に関する理論です。要はより多くの紙幣を印刷すれば、より多くの経済活動を生み出し、インフレを起こさず公共支出へ直接資金を供給できる。これこそ日本銀行が行ってきたことといえます。
日銀は白川方明前総裁の下で緩やかに、黒田東彦現総裁の下では積極的に、MMT的な経済政策を行ってきたわけです。ですがMMTは、一定の条件なしには財政政策が機能しません。
そして消費税の根本的な問題は、家計収支の在り方にあります。