米国務省高官が、第5世代移動通信規格「5G」のネットワークから中国を排除するため、NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天など日本の通信企業を秘密裏に呼び出して協力を求めていたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。ポンペオ国務長官が8月に発表した「クリーンネットワーク構想」への参加を直接訴えた格好だ。特集『企業直撃 新・地政学リスク』(全14回)の#1では、日本政府の頭越しに、外国企業に圧力をかける米政府の実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
ポンぺオ一派が招集したのは
日本の通信業界を代表する6社
「企業の諜報活動を支援している中国に対抗し、われわれは協力し合って、信頼できるネットワークを構築しなければならない」
日本時間8月7日早朝。ウェブ会議の画面の向こう側から、日本企業の幹部を相手に熱弁を振るっていたのは、キース・クラック米国務次官だった。
クラック国務次官は、ポンペオ国務長官、副長官に次ぐ米国政府の高官中の高官だ。台湾の李登輝元総統の告別礼拝に、米国を代表して参列した人物という事実で、クラック国務次官の政治的役割の大きさがうかがえる。この日本企業とのウェブ会議には国務省からほかに、日本・韓国を担当しているマーク・ナッパー次官補も参加した。
関係者によると、クラック国務次官の要請でこのウェブ会議に参加した日本側の企業は、NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天の大手通信キャリア4社に加え、NECと富士通の通信設備ベンダー2社。米国政府の招集で、日本の通信業界を代表する6社が勢ぞろいしたのだった。
1時間のこの会議の中で、クラック国務次官は参加した6社に対し、中国ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)など中国製の機器の危険性を改めて訴え、第5世代移動通信システム(5G)のネットワークから排除することを強く求めたという。