2019年に米グーグルが「量子超越性」を実証したと発表するなど、いま注目を集めている量子コンピューター。実用化されれば産業構造が大きく変わるといわれているが、期待とは裏腹に「ビジネスには当分ならない」と一刀両断に言い切るのが、量子コンピューターベンチャー、blueqatの湊雄一郎代表だ。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#36では、湊代表に量子コンピューターの現在地について聞く。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
話題が先行する量子コンピューター
――2019年10月に米グーグルが「量子超越性」(量子コンピューターが従来型のコンピューターよりも何らかの計算を高速でできること)を実証したとする論文を発表し話題になりました。量子コンピューターに対する期待が高まっている現状をどう見ますか。
正直、まだ技術的には成熟しておらず、話題先行になっているのでそこは注意が必要です。実際のビジネスとしては、現在は材料計算や金融分野などへの応用に注目が集まっていますが、量子コンピューターを活用したい企業が期待感だけで手を付けてしまうと、実務で成果を上げるまでに無駄な時間やお金を費やしてしまう可能性がある。
グーグルの論文についても、量子コンピューターを使えば「世界最速のスーパーコンピューターで計算に1万年かかる問題が200秒で計算できる」という内容でしたが、実は既存のスパコンでも使い方を工夫すれば2.5日で計算できるものだったという指摘がされており、言った者勝ちの世界になるのはもったいない。
国内の状況を見ても、正直いまは「盛り下がっている」タイミングです。