発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。
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発達障害の僕が発見した「見た目にお金を使う気がない人」が見逃す重要なポイント

経営者は相手を「時計」で値踏みしている

 僕は26歳で独立して会社を立ち上げたのですが、最初の悩みは「何を着ていいかわからない」でした。なにせ、ぽっと出の若造ですからあまり仕立てのいい高級なスーツは生意気ととられてしまう。かといって、安っぽいものでは足元を見られる気がする。しかも、周囲の若手経営者たちはあまりスーツを好みません。当時僕が持っていた銀行員時代のお堅いスーツは、明らかに浮いていました。

 しかし、何年か観察を続けた結果、30代になってこの問題は解決しました。「彼らはたいして人の服を気にしていない」─そのことに気づいたからです。服なんて、ジャケットさえ着ていればOK。むしろ、彼らが見ているのはもっと細部に寄った部分でした。具体的にいうと「腕時計」です。

 実際のところ、服のブランドに詳しい人なんてそんなに多くありません。服というのはかなり趣味性の高いものです。しかし、腕時計と靴はわりと一目で値段相場が見て取れ、相手の価値を値踏みするときの判断材料になります。安い時計をしているだけで、ビジネス的にも不利になる可能性があるのです。

 僕はこういった社会的約束事を「茶番」だと感じてしまうところが非常に強いですし、おっさん同士の腕時計マウンティング合戦なんてのは本当にお寒いものだと思うのですが(本当に好きな人はもちろん別ですよ。よい腕時計を好むのはよい趣味だと思います)、それでもやはり身なりでその人を判断するところがゼロかといえば、そんなことはないといわざるを得ません。

アップルウォッチは4万円でも「安い」

 結論として、僕らのようなおしゃれ、センスと無縁の人間たちが選ぶべき時計は、たったひとつ。「アップルウォッチ」です。アップルウォッチは4万円台(Apple Watch Series 5/2020年7月現在)とそんなに安いものではありません。すいません見栄を張りました、高いです。しかし、高級時計と比較したら、その価格は比べ物にならない。実際、10万円の時計というのはおっさんたちの世界ではむしろ「安物」に属するそうなのです。僕みたいな小僧からするとあまり想像がつきませんが、腕時計について調べていくと、やはりこの相場観は一定正しいのだろうなという気がしました。

 アップルウォッチを身につけるだけで、僕らは「私はそれなりにお金を持っていて、しかも他人から自分がどう見られるかの一定の意識ができる人間です」と表明することが可能になります。もちろん、LINEの着信が見られたり支払いができたり、実用性もあり便利です。そして、逆に「高級すぎる嫌み」もない。上司がどんな時計をつけていても、アップルウォッチは安心して使えるところがあります。この辺の高すぎず安すぎないブランド構築、アップルは本当にすごい。

 今日も社会で繰り広げられる時計マウンティングに勝つ(正確には、同じ土俵に乗らず回避する)ために、アップルウォッチでやっていきましょう。

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