日本ではあまり自分で考えず、進行方向が決まっている船に乗るような形で働きたいと考えている人も少なくなく、そういう人にとってはメンバーシップ型の方が働きやすいかもしれません。ただ、メンバーシップ型はキャリアの自律性が低くなるため、結婚や出産などのライフイベントで職を離れることが多い女性には不利な働き方です。一方でジョブ型は個々のキャリアを重視する働き方です。転勤や配置転換が基本的になく、性別役割分担ではなく、共働き夫婦に向いています。しかし、会社員ではあるものの保障は少なく、常に緊張感も伴いますので、その働き方が全員に合うかはわかりません。共働き家庭が増えているからといって、一概にジョブ型にシフトすればみんなが幸せになれるかは難しいところです。
 
――企業も終身雇用の保障が困難になっており、メンバーシップ型雇用だけでは難しくなっていきますよね。ジョブ型にシフトしていくためにどのようなことが必要なのでしょうか。

 ジョブ型を導入するのなら、企業は能力や個人の貢献に対して給料を支払うよう体制を整える必要があります。最近、日本でもジョブ型にシフトしようとしている企業は増えているのですが、単純に賃金カットや人件費抑制の方便に使われないか、心配です。本来ジョブ型の場合、50代のあまり仕事ができないような人には多くの給料が支払われず、20代や30代でも優秀な人は管理職になり、50代の平社員の数倍の給料をもらうといったことが起きます。年功序列が関係ない処遇にならないと、ジョブ型とは言えません。

 従業員側にも変化が必要です。一企業に頼っていれば定年まで安心して働ける時代は長くは続かないでしょうし、ジョブ型の働き方が広まったら、組織に属しても個々の責任が大きくなります。一方で昔のように、企業が定年退職まで守ってくれるような時代ではありませんので、パフォーマンスを発揮すれば会社への忠誠心がそこまで必要なのかは疑問です。

――結果中心に評価されるようになれば、プライベートな用事や学び直しなどで休暇を取る人も増えるかもしれません。

 仕事のパフォーマンスは追求されるけれども、性別も年齢も問わずいろいろな選択肢が認められ、休む理由についてもお互い寛容になれば、幸せになる人も増えるのではないかと思います。

治部れんげ
ジャーナリスト。ジェンダーなどについて執筆、講演、助言。政府主催の国際女性会議WAW!アドバイザー、豊島区男女共同参画推進会議会長。公益財団法人ジョイセフ理事、一般財団法人女性労働協会評議員。Fulbrighter(2006~07年)。著書に『「男女格差後進国」の衝撃 無意識のジェンダー・バイアスを克服する 』(小学館新書)、『炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である 』(日本経済新聞出版)