――パートナーの方とケンカした後、一人でラーメン店へ行き、そこで酒を飲んだ後、犯行に及んだとありました。酒も一つのトリガー(きっかけ)だった?

 引き金の一つだとは思いますが、順番としてはストレスで酒を飲んで、さらにもう一歩踏み込んでしまった。精神的ストレスからそうなるというのが彼の特徴かもしれません。

筆者注:性犯罪の被害者の中には、加害者が動機を「ストレス」と語ることに憤りを覚える人も少なくない。ストレスで傷つけられる側はたまらないし、ストレスがなぜ性加害につながるのかを説明できる加害者は、ほとんどいないからだ。専門家の中にはストレスが性加害につながる理由を「女性蔑視があるから」と説明する人もいるが、多くの加害者にとって、ストレスと性加害をつなぐものの言語化は、非常に困難であるらしい。

キリスト教を信仰し、リベラリストだった

――事件の5日後に出頭していますね。自分から出頭したことについては、まだ救いがあるように思います。

 本人はすぐに出頭すると決めて、弁護士を探すなど準備したみたいですね。彼は直接話してみると、理論的だし、社会の中で女性の置かれる状況の問題などにも理解のある人。それから信仰を持っていたというのも大きいと思います。自分が罪を犯したときにどう行動すべきか、冷静になってから考えて自首したのでしょうね。

――普段は理性的で社会問題にも関心があり、信仰を持って真っ当に生きようとしていた。けれど、性的な加害衝動を止めることができなかったということですね。

 薬物やアルコール依存になる人も、精神的にうまくいかないことがあって薬物やアルコールに頼っていく。彼の場合は、前の事件もそうだったのだと思いますが、性犯罪という形になってしまう。どうしてそうなってしまうのか、私には分からない。人権や信仰を重んじる部分と彼のやったことが結びつかないんですが、そこは解明しなくてはならないところだと思います。

――容疑者がツイッターのアカウントを持って発信していたことも、一部では話題になっています。

 出所後にツイッターではフェミニズムやリベラルっぽいことを語っていたと。でもこいつは、実はとんでもないやつだとネットではそういう攻撃を受けていたようです。

――彼は前回の服役中に、性犯罪加害者の更生プログラムであるR3プログラムを受講したと手記でも書いています。出所後も再犯防止のためのカウンセリングなどは受けていたのでしょうか。

 積極的にはやっていなかったと思います。たぶんそれよりも出所後、自分の生活基盤を作ることに精いっぱいだったのでしょう。事件後に接見した時には、カウンセリングを受けたり相談したりする専門家が身近にいれば、兆候があったときにすぐ対応することができたかもしれない、と言っていました。R3のテキストをもう一回読み返してみようかと思っていたところだった、とも言っていましたね。

筆者注:R3プログラムは、2004年に起きた奈良女児殺害事件をきっかけに2006年に導入された性犯罪加害者に対する更生プログラム。認知の歪み(「女性は本当は襲われたがっている」などの偏った思考)の変容や対人関係スキルの獲得などを目的に、認知行動療法が行われる。一定の成果が出ているという評価もあるが、発展途上の取り組み。