今年はじめに端を発した新型コロナウイルスの世界的な流行は、私たちの生活に大きな変化をもたらした。仕事に関しても例外ではなく、これまで国が推進しようとしても遅々として進まなかった「働き方改革」が一気に進んだとも言える。ただ、あまりに急速な変化の中で「働くとは一体何なのか」という根本的な議論が置き去りにされているのではないか。その道のプロが考える「働くということ」に関する提言はあるが、ここでは現場の声を紹介したい。東大中退・ハーバード大卒の秀才で、Google等の内定を蹴り、スタートアップで活躍する若者の考える「働くということ」とは。

何物にもとらわれない発想が
仕事を自由にする

――山田さんは現在、米国スタートアップのAsana日本法人でソリューションエンジニアとして働かれていますが、日常的にはどのような働き方をされていますか。

山田 米国本社及び日本法人社内とのミーティングやそれを受けてのソフトウェアの開発、さらに日本市場で営業活動やマーケティング活動などを行っています。

――新型コロナウイルスの流行の中で、仕事をする上でも様々な制約があり、ストレスが溜まる環境にあるかとも思いますが、いかがですか。

山田 現在はほぼテレワークで仕事をしていますが、もともと米国とのやり取りはオンラインミーティングが主で、それが拡大したという感じで、それほどストレスは感じていません。ソフトウェア開発についても、PC環境が整っていればどこでもできるものなので。

――日本国内でもテレワークの拡充・定着など、働き方が大きく変化していて、この状況は続いていくのではないかと考えられます。山田さんは米国ベイエリアでキャリアをスタートさせ、またハーバード大学では様々な才能と出会って来られたと思いますが、このような環境下において、私たちはどのように仕事と向き合っていくべきだと思われますか。

東大中退・ハーバード大卒の27歳が考える、これからの「働き方」とは山田寛久(やまだひろひさ)
Asana ソリューションエンジニア
1993年東京都生まれ。2012年麻布高校卒業、東大理科一類とハーバード大学現役合格。東大に数カ月通ったのちハーバードに進学し、コンピューターサイエンスを専攻。在学中Google本社やPalantirでエンジニアとして経験を積み、ハーバードを成績優等で卒業。卒業後はGoogle本社などの内定を退け、当時スタートアップであったAsanaに新卒入社。シリコンバレーの最前線でプロダクト開発に携わる。 2019年Asana日本法人を立ち上げ、1号社員として移籍。2020年上場したAsanaの日本でのビジネス展開を、技術面から推進する。
写真:八雲いつか

山田 私が経験し、見てきた範囲での考えになってしまいますが、今感じていることがいくつかあります。

 ひとつは、「仕事というのは自由であるもの」ということです。仕事の進め方が人それぞれであるのと同時に、キャリアの重ね方は人それぞれであり、決して何かにとらわれるものではないと考えています。自由というのは無責任な仕事をするということではもちろんなくて、与えられた仕事をどうクリアしていくのか、そのための発想が自由であるという意味です。

 米国本社勤務時代に、こんな社員がいました。非常に優秀な人物なのですが、家族との時間を優先するため、毎週の定例ミーティングには絶対出られないと。その彼が欠かさず行っていたのは、別の時間での個別メンバーとの雑談でした。自分の仕事のキーパーソンとなる社員に対して、とりとめもない話をし、その中でプロジェクトの大事な部分を必ず少し話して共有していたのです。それを行うことによって、彼自身の仕事はいつもスムーズに確実に動いていました。

 自由に仕事をするためにスキルアップを目指す。自由に仕事をするために仲間とのコミュニケーションを深めみんなで解決する。自由に仕事をするためにモチベーションの置きどころを変えてみる。自分なりのあり方を見つけることが大事なのではないかと思います。