自分を動かすコントローラーは自分で握りたい

 子どもの頃のことを思い出してみよう。学校から帰り、食事を済ませ、テレビをだらだら見ながらも、「そろそろ宿題をしないと」と思っているときに、「いつまでテレビを見てるの! 宿題やらないとダメでしょ!」と親から言われると、「今やろうと思ってたのに、もうやる気なくなった」と反発する。

 内心では「早く宿題やらないとまずいな」と思いつつも、意地になってテレビを見続ける。そんな経験のある人も少なくないはずだ。「早くやらないとまずい」と思いながら、なぜやらないのかといえば、自律欲求を阻害されたからだ。

 自分を動かすコントローラーは自分で握りたい。それはだれもが持つ基本的な欲求である。結果として同じことをするにしても、それを自分からするか、人から言われてするかで、モチベーションのあり方は180度違ってくる。

 管理職や経営者としては、部下や従業員を指示通りに動かすのが効率的だし安心なのだろうが、それによって従業員のモチベーションの低下を招き、結局は業績向上につながらないというのでは意味がない。

 だからといって、マニュアル化自体がよくないということではない。大切なのは、効率化やリスク予防のために仕事をマニュアル化をするにしても、個人の創意工夫の余地を残すことである。

 特に凝り性の人は、いったんマニュアル作成に着手すると、工夫を凝らして細部までマニュアル化を貫徹しようとしがちである。でも、そんなことをしたら従業員のモチベーションは地の底まで落ちてしまう可能性が高い。そこまでマニュアル化の工夫に凝っている自分を振り返れば、創意工夫の喜びがモチベーションにつながっているということに気づくはずだ。そして、マニュアル通りに動きさえすればよいなどとなったら、従業員から創意工夫の喜びが奪われるということがわかるだろう。

 もともと能力的に自信のない人や仕事へのモチベーションの低い人は、マニュアル通りに動いてもらって構わない。だが、能力的に自信があり、仕事に対するモチベーションの高い人の場合は、創意工夫の余地が乏しいとモチベーションを低下させてしまう。できる人のやる気を奪うのは、組織としても大きな損失になる。ゆえに、ある程度仕事ができるようであれば、マニュアルの中に自由度のある部分をつくり、創意工夫の余地を残すようにしたい。

  さらには、個人がうまく工夫した点については、きちんと評価し、それを認めるような声がけをすることも大切だ。それにより自律欲求に加えて承認欲求も満たされ、モチベーションが上がるはずである。