銀行再編の黒幕#13Photo by Takeshi Shigeishi

第一生命保険の元社員の女性が約19億円を顧客からだまし取ったとされる巨額詐取事件。この女性と深い関係があったとされる山口銀行の元頭取が、長年住み続けた社宅を退去したことが分かった。約15年前に起きた「悪夢」が、再び山口銀を襲おうとしている。特集『銀行再編の黒幕』(全16回)の#13は、その現場に迫った。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

不正詐取で問われる山口銀の責任
ドンの「無血開城」が再編の予兆

 山口県下関市の山口銀行本店から車で15分ほどの閑静な住宅地。その一角に、城壁さながらの白いしっくい壁に囲まれた純和風の屋敷があった。

 この家の住人に会うため、10月末日に訪ねた。だが住人は不在で、応対した家族とおぼしき女性がこう告げた。「今は入院していて、もうここに帰ってくることはありません」。玄関先には引っ越し用の段ボール箱が積まれ、慌ただしく転居の準備を進めていることがうかがえた。

 住人は、山口銀の元頭取で現在は「特別社友」の田中耕三氏(94歳)だ。