UNICはディズニーが映画業界に「取り返しのつかないダメージ」を与えるという趣旨の内容で、「『ソウルフル・ワールド』をDisney+に直接公開するというディズニーの決定は、ヨーロッパ中の多くの観客から大画面で見ることを奪い、すべての映画館経営者にショックを与え、落胆させた」と遺憾の意を唱えた。

 劇場と映画スタジオは共に発展してきた歴史があり、映画ファンによって文化を形成してきた事情背景をくみ取ると、否定の声が上がるのも当然のことだ。だが、ほとんどのハリウッドのスタジオがコロナ禍によって、劇場ファーストを崩した戦略を試したようにディズニーもスタジオを運営する立場から方向転換に迫られている立場にある。また「ニューノーマル」という言葉が浸透し、消費者行動そのものにも変化が起こっている。

 そのなかで、作品をより多くの人々に届ける手段を選ぶ上で、急速に普及する動画配信サービスで公開する方法を探り続けることは長期的に見ると、業界全体の発展に必要なことと言わざるを得ない。肯定派と否定派がしばらく混在することになり、それに消費者が翻弄されることが予測されるが、消費者にも選択肢がある。

テーマパークや映画部門の収益急落を補う配信部門の組織強化

 ディズニーの発表によれば、Disney+やHuluなどディズニーグループの動画配信サービスの加入者数は現在、全世界で1億人以上に上る。2019年11月から米国でスタートしたばかりであるのにもかかわらず、世界ですでにNetflixに次ぐポジションを押さえるまでに急成長しているのだ。

 ディズニー作品はキッズ層のリピート視聴が多く見られることに特徴があり、それが強みとなって、ファミリー層から多くの支持を受けている。つまり、コロナ禍で大きな打撃を受けたテーマパークや映画部門の収益の急落を補うのは配信部門にあることは明白だ。

 NBCユニバーサルやワーナーメディアなど大手ハリウッド勢が配信強化にシフトチェンジする動きに続いて、本国ディズニーも大幅な組織変更を発表した。具体的にはすべてのコンテンツを一つのグローバルなメディア・エンターテインメント・ディストリビューション・グループに統合されることがポイントになる。新部署ではDisney+などの動画配信サービスの管理を米国だけでなく、全世界カバーすることになる。

 マーケティングから番組開発・制作チームまで連携し、Disney+でコンテンツをグローバル配信することによって最大限に収益を上げていくというわけだ。前職ではコンシューマープロダクツ、ゲーム、パブリッシングの社長を務めていたカリーン・ダニエルがその責任者となり、加えて、2018年からテレビ制作を統括してきたピーター・ライスが配信向けの総合エンターテインメントコンテンツに注力するなど、経営陣の体制も整えられる。

 ディズニーの配信強化へのシフトチェンジはこうした動きから本気度がうかがえる。思わぬかたちで話題をさらったディズニー映画『ムーラン』は想定外の動きだったかもしれないが、不確定要素が強まったコロナ禍と相まって、一縷の望みに賭けることにいとわない覚悟の表れともいえる。