医療者側の敗訴です!“命を救うための医療行為である輸血”よりも“患者の宗教上のポリシー”を優先できる、あるいは医療者側が患者のポリシーを妨げることはできないという判断です。ちょっと乱暴なことばを使うと「余計なお節介はやくな」だったのです。

超強力な思考の武器「2大対比キーワード」

 みなさんはどう考えますか。どちらに同情しますかということではありません。この裁判で火花を散らす、それぞれの、そもそもの発想はどこからきていると考えますかということです。本書はアイディア発想法の本ですから。

 この裁判の争点を生命倫理学の用語で言い表せば、「QOL」対「SOL」、「生活の質」対「生命の尊厳」です。医療に限らず、もっと広く応用できる学術用語をつかえば「リバタリアニズム」対「パターナリズム」の戦いです。

「リバタリアニズム」とは、他人に危害を加えない限り、何をしてもよいという徹底した自由主義の考え方です。自己への危害ならば自由の範囲内です。

 一方、「パターナリズム」は、相手(他者)にとってよいことは強制し、相手にとってよくないことは強制的にやめさせる考え方です。

 これは、人間の振る舞いについて考えるときの「2大キーワード」とも言えるものです。どっちに与するかということではなく、物事を考える方法論として知っておきましょう。

 それでは、さまざまな事例を通じて、この2大対比キーワードに関する理解を深め、アイディア発想の方法論として使えるようにしましょう。

(本原稿は、『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』からの抜粋・編集したものです)