中国で開催される試合への
日本選手の参加中止が続出

 尖閣諸島領有問題で生じた日中の緊張関係はスポーツ界にも影響を及ぼしている。

 中国で行われる大会への出場を見合わせる日本選手が続出しているのだ。卓球では9月19日から中国で行われたW杯にロンドン五輪団体銅の石川佳純がエントリーしていたが、欠場を決断。実力アップのために参加を検討していた中国スーパーリーグでのプレーも断念する可能性が高い。

 同23日に山東省で開催されたトライアスロンアジア選手権には日本から9人の選手が出場する予定だったが、大会主催者から「安全を保証できない」と言われたため派遣中止。同22、23日に上海で行われた7人制ラグビー・アジアシリーズへの日本代表派遣も見送られた。日本4・韓国2・中国1の計7チームが参加するアイスホッケー・アジアリーグは、上海を本拠地にするチーム・チャイナドラゴンのホームゲームが延期になった。

 10月中旬に上海で行われるテニスのマスターズ大会には錦織圭が、11月上旬にやはり上海で行われるフィギュアスケート中国杯には浅田真央、高橋大輔らが出場を予定しているが、厳重な警備をつけるなど安全面を徹底するという条件つきだ。

 日本政府が尖閣諸島を国有化した直後、中国各地で反日デモが起こったが、デモだけでは収まらず、日本企業に対する略奪や破壊行為が行われた。あの光景を見たら競技団体も大事な選手を派遣したくなくなるし、行く予定があった選手だって不安を感じないわけがない。

 また過去には中国で開催された大会で日本選手や、それを応援しに現地に行った日本人観客が危険にさらされたり不快な思いをする事件が起きている。

 2004年のサッカー・アジアカップでは日本の国歌演奏が中国人サポーターの大ブーイングでかき消されたうえ、日本選手や日本人サポーターに向けて空き缶やペットボトルが投げ込まれた。決勝が日本―中国の対戦になるとその行為はさらにエスカレート。国歌演奏時はもちろん試合中も日本選手に対するブーイングや罵声が飛び交ったし、日本代表が3-1で勝利すると、怒った中国人サポーターがスタジアムの出口に集結し、日の丸を燃やしたり日本公使のクルマを襲撃したりした。そのため日本選手や日本人サポーターが数時間、スタジアム内に足止めされたほどだ。