初めて文氏がTPP加盟に
意欲を示した3つの背景とは?

 韓国の文大統領は、就任以来、安全保障面では米国、経済運営面では最大の輸出先である中国、そして外交政策面では北朝鮮を重視してきた。

 社会と経済の安定にとって、安全保障体制の確立は何よりも重要だ。本来であれば文大統領は、米国が経済面からの対中包囲網として重視したTPPに、初期の段階から参画しておかしくはなかった。

 しかし、そうはならなかった。つまり、文氏は米国との安全保障上の関係よりも、中国との経済的な関係を優先したと考えられる。

 今回、初めて文氏がTPP加盟に意欲を示した背景には、大きく3つの理由が考えられる。

 1つめは、TPP参加に積極姿勢を示した中国をフォローする狙いがある。韓国にとって対中輸出は経済成長を支える要だ。TPPを重視する姿勢を示すことで、文大統領は中国との経済的関係の強化を目指したいだろう。経済面での対中関係を優先する文氏の考えはかなり強いといえる。

 2つめは、文氏は、米国のバイデン次期政権の出方に柔軟に対応することももくろんでいるだろう。オバマ前政権の副大統領としてTPPを推進したバイデン氏は、本心では、国際的な貿易と経済連携の枠組みに復帰し、多国間の連携によって対中包囲網を整備しなければならないとの考えを強くしているはずだ。現実にバイデン次期政権が、TPP復帰を目指すとなった際、文氏は米国に顔向けができるようにしたい。それも同氏がTPPに意欲を示した一因といえる。

 3つめは、韓国にとってTPPへの参加は、自由な国際貿易の枠組みに参画し、輸出競争力を高めるチャンスになり得る。なぜなら、韓国経済にとって貿易は経済成長を実現するために重要だからだ。足元、新型コロナウイルスの感染再拡大によって、韓国の輸出や所得、雇用環境への不安は高まっている。それに加えて、文氏の支持率は過去最低に低下した。その状況下、世論の目線を海外に向かわせ、輸出拡大などへの期待を高めて人気を獲得するために、文氏はTPP加盟に意欲を示したのだろう。