菅義偉首相が地方銀行の再編について言及したことで、2021年は再編加速が予測される。またメガバンクと地銀共に、コロナ倒産の増加とどう向き合うかが避けられない経営課題だ。特集『総予測2021』(全79回)の#20では、21年の銀行業界が抱える重大テーマについて解説する。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
菅首相が地銀再編の必要性について言及
政府・日銀の異例制度に包囲される地銀
2021年は、踊り場にあった地方銀行の再編が、せきを切ったように動きだすとみられる。
号砲を鳴らしたのは、「(地銀の)数が多過ぎる」「再編も一つの選択肢」と言及した菅義偉首相だ。事実、あらゆる業種で再編が進む中で、特に有力地銀である「第一地銀」の数は、平成の間、ずっと63~64行体制を維持してきた。
菅政権の動きに呼応して、地銀再編を後押しする異例の施策が政府や中央銀行から出ている。
その一つが、20年11月に日本銀行が発表した特別当座預金制度だ。対象期間内にOHR(経費率)を改善させるか、合併・統合を機関決定した地銀に対しては、日銀への預金残高に0.1%の金利を上乗せするもので、再編を選べば業績改善の恩恵を受けられる。
さらにその直後、合併・統合した地銀にシステム統合費などの費用を補助する資金交付制度もお目見えした。実施に向けて、金融庁は21年の通常国会に金融機能強化法改正案を提出する考えだ。
加えて、政府が19年の未来投資会議で議論した、経営不振に陥った地銀同士の合併・統合であれば独占禁止法の適用を除外する特例法が、20年11月に施行済みだ。
特例法は10年間の時限措置だ。また、日銀の新制度は23年3月末までが対象期間で、資金交付制度は21年夏からの運用開始が目標となる。つまり、21年の夏から23年3月末にかけては、三つの施策が重なり、再編環境が最も整っている時期といえる。
こうした“再編包囲網”が敷かれる中で、21年に合併・統合を含めた変革が必至な地銀はどこか。