新型コロナウイルスの感染再拡大のもとでNYダウは3万ドルを突破、東証平均株価もバブル崩壊後の最高値を更新するなどの世界的な株高が続く。株高を支えるのは財政金融の総動員のマクロ政策だ。21日には日本では歳出規模106兆円の来年度予算がまとめられ、米国でも約9000ドル規模の追加経済対策が議会で合意された。日本銀行やFRBも直近の政策決定会合で大規模金融緩和の維持を決めている。実体経済と大きく乖離した“株高経済”は新たなリスクを生み出すことはないのか、マクロ政策運営に問題はないのか――山口廣秀・元日本銀行副総裁(日興リサーチセンター理事長)に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部編集委員 西井泰之)

行き場のないお金が
出てくるのは当然だ

――財政金融政策の総動員が各国で来年も続きそうです。日本でも3次の補正で歳出規模が175兆円に膨らんだ今年度予算に続いて、来年度も当初予算だけで歳出規模が100兆円を超える見通しです。

山口廣秀(やまぐち・ひろひで) 日興リサーチセンター理事長、1974年4月日本銀行入行、金融課長、高松支店長、企画局長などを経て2008年10月に副総裁。13年3月に退任後、同7月から現職。1951年生まれ。  Photo by Kazutoshi Sumitomo

 感染症を封じ込める対策とコロナ禍での経済の下振れを食い止める対策を両立させる政策運営は必要だ。だが難しいのは、感染の局面がその時々で変わるので両立の仕方が予想がつかないことだ。

 欧州では再び都市封鎖(ロックダウン)をする国も出ているが、日本でも事態が変わるなかで試行錯誤が続かざるを得ない。GoTo政策の見直しや巨額の政府債務を抱える中での財政出動を含め、これまでの政府の対応はやむを得ないことだと思っている。

――しかし株価は急上昇しています。実体経済との落差をどう考えますか。

 企業の経営破綻や個人の生活の行き詰まりを防ぐということで巨額の財政支出や金融の大規模緩和を通じて大量の資金が投入されている。それは企業や消費者のマインドを改善するために必要なことだが、ただいくら大量に資金を供給しても、企業は経営防衛、消費者は生活防衛だけにお金を使っている。

 企業が積極的に設備投資をすることはないし、人々も在宅勤務用にパソコンを買うことはあるかもしれないが、消費性向は低下している。行き場のないお金が出てくるのは当然だ。お金は預貯金やさらに株や不動産、投資信託などに行くということが世界中で起きている。

大規模な財政出動、緩和が
続けられなくなる時が問題

 問題は大規模な財政出動と金融緩和をいつまで続けられるのか、ということだ。続けられなくなった時には企業の倒産は増え景気は当然、悪化する。今の株価と実体経済のギャップは株価が下がる形で調整される。それが次に来ることだ。そこは非常に心配している。

――株価上昇はワクチンの接種開始などで経済回復の期待があるからという見方もあります。

 1年先、2年先を見通して、ワクチン接種が普及し、コロナが収束して企業の活動も個人消費も回復するといった将来への期待があるという説明は聞くが、それはどうなのだろう。

 コロナ収束については本当に不確実性が高い。そういう中で今の株高を将来の景気回復期待で説明するのには無理がある。今の株高は何よりも金余りが大きい。