菅義偉首相のブレーンである竹中平蔵氏がANAホールディングスと日本航空の「統合論」をぶち上げた。これに両社社員・幹部や国土交通省官僚ら関係者は強く反発している。特集『航空・鉄道 最終シナリオ』(全18回)の#11では、議論本格化を後押しする「三つの圧力」を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
政権ブレーンの竹中平蔵氏が
ANA・JAL国際線統合論
「一度経営に失敗した日本航空(JAL)は国内線に特化し、国際線はANAホールディングス(HD)1社に統合するというのが再編の在り方だと思います。国際線と国内線を接続する必要があるので、ANAHDは国内線もやる。こうしたことをよくよく考えて健全な競争ができるようにルールを作る必要があります」
菅義偉首相のブレーンである竹中平蔵氏は、2020年にダイヤモンド編集部のインタビューで両社の国際線を一本化する「ANA・JAL統合論」を唱えた(詳細は『ANA・JAL統合論の全貌「国際線はANA1社に」、菅政権ブレーンの竹中平蔵氏を直撃』参照)。
この統合論に当のANAグループ(以下、ANA)やJALの社員・幹部はそろって「絶対にならない。したくない」「組織が一つになったところで、人心もカルチャーも溶け合うのは無理」と拒絶感をあらわにした。両社のライバル意識はそれほどまでに強い。
航空会社の監督官庁である国土交通省の官僚は「自力で生き抜こうとしている段階で国が口を出すことはない」「空港使用料や航空機燃料税を減免する。それが今の現実的な支援」とけん制する。
当事者は大反対する統合論ではあるが、議論を迫る「三つの圧力」がある。
第一の圧力は「竹中氏」である。竹中氏は菅政権が設置した成長戦略会議に有識者メンバーとして参加している。
同会議がまとめた「実行計画」には、産業を強くするための競争政策を議論する場をつくることが盛り込まれている。競争政策のルール作りだったり再生を行ったりする対象としたい産業として竹中氏が挙げるのが「当面は携帯電話、電力、銀行、そして公共交通」。航空会社がターゲットに入っているのだ。
では、第二、第三の圧力とは何か。そもそも国内2強が統合するというのは、独占禁止法に引っ掛からないのか。