アートを巡るおカネの流れはどうなっているのか。時に美術品はオークションなどで巨額の取引が交わされる世界だけに、内実が気になるものだ。美術品を販売するギャラリー、画商や百貨店、古美術商のほか、オークション会社のビジネスモデルはどうなっているのか。特集『アートの裏側「美術とお金」全解剖』(全10回)の#2では、素人目には分かりづらい彼らが「もうける」仕組みを解剖する。
飛び交うカネ、熾烈な駆け引き
アートビジネスのもうけの構造
2017年3月某日。米ニューヨークでは選ばれし紳士淑女が集う晩餐会が開かれていた。実は、この晩餐会参加者のお目当ては日本の美術館が持つ美術品だった。
3月15日、藤田美術館(大阪市)所蔵の中国美術品がニューヨークで開かれたクリスティーズ主催の競売に出品された。青銅器や書画など計29点が、たった一晩で総額約300億円で落札され、同社の競売の東洋美術での落札総額として過去最高となった。
話題を集めた同競売の数日前、買い手となり得る中国の有力コレクターや骨董商などを招いたのが冒頭の晩餐会。今回のように注目度が高い場合、競売前にこうした会が催される。そこに集うのはいわば競売のライバルたち。庶民にはその胸中を計りかねる超富裕層のためのひとときなのだ。
マネーがうごめく美術界。その“儲けの構造”は案外見えづらい。ここでは、内幕を明かしていく。