アートの裏側「美術とお金」全解剖#9
Photo:Andrew Toth/gettyimages

現代アートが苦手な日本人は多いかもしれないが、一方で「どこかで見たことがある」という作品も少なくないはずだ。それだけ現代アートはすでに世の中に浸透しているのだ。せっかくなら、有名作家や背景を知ればより楽しむことができるだろう。そこでここでは、西洋美術史と日本美術史に続く第3弾として、現代アート史をお届け。特集『アートの裏側「美術とお金」全解剖』(全10回)の#9では、『めくるめく現代アート』の著者、筧菜奈子さんに現代アートを一気に解説してもらう。現代アートの生みの親とされるフランスの作家、マルセル・デュシャン氏から、日本人アーティストの草間彌生氏や岡本太郎氏、村上隆氏まで、「11人の有名作家と作品」を一気に理解しよう。(寄稿/美術・装飾史研究者、作家 筧菜奈子)

「週刊ダイヤモンド」2017年4月1日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は原則、雑誌掲載時のもの。
イラストは『めくるめく現代アート』からの転載

ウォーホルから草間彌生まで
一気におさらい!現代アート

「現代アートは難しい」「ガラクタのようだけど、これがアートなの?」。現代アートに対して、このような思いを持っている方も多いのではないでしょうか。こうした問いに答えるべく、ここでは現代アートと過去の芸術との違いや、押さえておくべき知識や作家についてご紹介します。

【1】どこからが現代アート?

 諸説ありますが、マルセル・デュシャンというフランスの作家が現代アートの始まりとして、しばしば引き合いに出されます。彼は1917年に、男性用便器にサインをしただけの作品を展覧会に出品して、物議を醸しました。

 それまでの芸術とは、高い技術を持った画家や彫刻家が、風景や人物を表現することでした。そこには、物事を記録するという役割も含まれていたのですが、18世紀半ばにカメラが登場すると、その役割は取って代わられます。そこで芸術家たちは、機械にはできない表現を模索し始めたのです。

 こうした動きの中で、デュシャンは当時、次々と生み出される工業製品にサインをしさえすれば芸術になると主張しました。その主張は当時受け入れられず、便器の作品は展示会場から撤収されてしまいました。しかし、この出来事は、「芸術とは何か」という問いを提示しました。すなわち、芸術家が全てを作れば芸術なのか、展覧会で展示されれば芸術なのかといった問いが投げ掛けられたのです。

 こうしてデュシャン以後の芸術家たちは、芸術とは何かという問いをめぐって、常に新しい表現をすることに価値を置くようになりました。こうして現代アートは奇抜で難解になっていったのです。