2010年代に増加した、災害による大きな人的被害

 阪神・淡路大震災以降、我が国においては大規模な災害が多く発生していて、日本は、国際的に見ても有数の「災害列島」である。2010年代には大きな人的被害が発生した災害が多かった。多くの犠牲者が発生した災害として、東日本大震災(2011)、御嶽山噴火(2015)、熊本地震(2016)、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)(2018)、平成30年北海道胆振東部地震(2018)などがあった。

 東日本大震災や熊本地震以外にも、近年連続して発生する豪雨災害の影響も大きい。当然ながら、災害は発生しない方がよいが、日本においてそれはあり得ない。むしろ、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震への対策が懸案になっている。

近年の災害の特徴は「災害関連死」

 私はこの熊本地震の前震時に、ちょうど熊本城の向かいにおり、震度7の揺れを経験した。その直後から、熊本大学で教員として、防災や災害復興(特に被災者の健康問題)に取り組んだが、その中で災害関連死の多さがある。

 災害による直接死以上に、この関連死の多いのが熊本地震では顕著だった。私はこの分野で、被災者の地震前とその1年後の健康に関して、さまざまな要因が健康に影響しているのではないかという仮説の元、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)と被災者の健康についての調査を行い、統計的処理をして論文にした(古本尚樹「熊本地震被災住民における健康と生活について~被災地での調査から~」『地震ジャーナル』67号.30-37ページ、2019年6月)。

 これによれば、被災者の健康には個人レベルの復興度合いのみならず、地域社会の復興度合いとも関係があるとされる。例えばインフラ関係の復興の遅れは、都市部への移動、すなわちかかりつけ医や高規格医療機関へのアクセス、普段の食生活における買い物の頻度と質、また地域社会内での医療や保健など日常生活に必要な活動に影響し、ひいては中長期的な見地で、健康に影響してくる。また先述の「孤独死」に関わることだが、コミュニティー内での連携も健康に影響がある。そのため、避難所や仮設住宅等新しいコミュニティー内で人的交流を継続できるかが、生命に大きく関わっている。

帰宅困難者の問題をどう解決するか

 一方、首都圏など都市部で気がかりな課題もある。帰宅困難者の問題である。最近では、雪氷災害でもこうした課題が大きいし、台風などでも駅付近での滞留や電車内での長時間の待機が課題になっている。東日本大震災時には、多くの帰宅困難者が徒歩で帰路に就く模様がテレビなどで報じられた。南海トラフ巨大地震等の大規模災害が発生すれば、首都圏など都市部を中心に大きな影響をもたらすだろう。

 帰宅困難者が多数発生することのリスクは、移動中に建物の崩壊などで被災する可能性があること、電車内などでの滞留によって具合が悪くなる人が発生すること、徒歩などの移動者が歩道からあふれ、交通渋滞を引き起こし、事故の危険とともに緊急自動車の移動に遅延が発生することなどが懸念される。また、帰宅途中、企業等の一時避難所が満員になり結果、帰宅困難者が「たらい回し」の状態になることも予想される。