配属先も役割期待も知らないままの研修は
新入社員を「受動的」にする

 HCI(Human Capital Institute)とKRONOSが2017年に共同で行ったリサーチの報告書“New Hire Momentum:Driving the Onboarding Experience”によれば、以下のようなことが明らかになっています。オンボーディング(採用が決まった内定段階を含む)期間中に、マネージャーがその新規採用者と彼らへの期待や成功指標を共有する会話を行うと、将来求められるパフォーマンスのレベル感の擦り合わせに結びつくといいます。

 また、オンボーディング中にパフォーマンス要素を重視するほど、従業員のエンゲージメントスコアが高くなる傾向にあり、彼らが「採用された企業で働く」という受動的な意識ではなく、「自分が選択した雇用主」という意識を持つ可能性が高くなることが報告されています。

 つまり、オンボーディングのプロセスは、内定者の段階から始まっているのです。その段階で新入社員がどのような部門でどのようなマネージャーやチームメンバーと一緒に働くのかが分かっており、新入社員に期待されるパフォーマンスのコミュニケーションが早期から行われることが、モチベーションや組織貢献に対する意識を高めます。それによって、オンボーディング期間中の「研修」の目的がより明確になり、効果も高まります。

 皆さんの会社では新入社員に対して、所属先や上司も、期待される役割や結果も不明瞭なまま、インプットばかりが続く研修を行っていないでしょうか。そうであるならば、それは一過性のイベント的な位置づけとなり、学校の延長上のように「教えられることを受け取る」受動的なマインドセットを作る場になってしまう可能性があります。

新人研修がエンゲージメントに影響
欧米では研修内容の大幅見直しも

 そもそも新入社員プログラムの目的は何でしょうか?

 もちろん大きな柱は、価値観や組織文化の共有でしょう。ただ、組織によってはビジネスマナーのような基本的なものも含めて、配属先が伝えられないままに全ての研修プログラムを全員にインプットする内容になっていることも多いと見聞きします。時には、所属先が不明瞭なまま数カ月に及ぶ新入社員の知識・スキルにフォーカスした研修が、オンボーディングプログラムの主体になっている場合もあるでしょう。

 一方、かつて欧米で主流だったのが、たった数時間から1週間程度の新入社員向け研修の実施を人事が行い、あとは現場任せというプログラムです。しかし、オンボーディングの在り方が新入社員の離職、エンゲージメントに影響を及ぼしているというリサーチ結果から、オンボーディングプログラムの見直しが始まりました。そうして生まれたプログラムが、スキルや知識のインプットとしての「研修」ではなく、現場でのパフォーマンスマネジメントも含む人事戦略/タレントマネジメントの一環として、90日から1年のタームでそのプログラムを捉えるというものです。

 近年日本でも、入社3年以内に組織を去る新入社員の割合が3割に上っている点を鑑みると、ジョブ型組織へ移行するかどうかにかかわらず、新入社員オンボーディングプログラムを見直す良い機会ではないでしょうか。