リーマンショックやコロナショックを超える
大暴落が起こる可能性も

 ウォール街では、私がトレーダーとして仕事をしていたころから「世界経済は世界中の負債によっていつか崩壊する」といわれていました。

 負債の増加が単純に悪いことだとは言えません。重要なのはGDPなどに表れる経済成長率との比率です。

 国の経済が成長しているときであれば、設備投資などのためにお金を借り、生産量を増やすことで利益が生まれます。

 しかし、戦争需要や戦後の復興のためにモノが必要なときや、人口が増えて需要が増加している時期と違い、今は需要が伸び悩んでいます。その状態で負債が増えていくのは望ましくないのです。

 実際、大恐慌のときも、クラッシュが起きた背景に国内需要の低下がありました。当時は第一次世界大戦の影響によって欧州先進国の生産力が低い状態でした。

 一方のアメリカは、戦場にならなかったこと、ベビーブームによる住宅需要などの拡大、戦中から続いていた欧州諸国に向けた輸出などが追い風となって成長していました。

 戦争が終わってしばらくすると、需要が落ち着き、国内の需要と購買力も低下します。

 しかし、株式市場は株ブームで過熱状態が続きました。

 この差が大きくなり、「需要(実体経済)と株価が紐づいていないのではないか」と気がついた投資家たちが株を売り始め、大恐慌の引き金を引くことになったわけです。

 アメリカの負債額(公的と民間)の対GDP比は、大恐慌に向けて大きくなっていきました。そして、大恐慌を経てこの数値は一気に下がっていきます。国が再び成長力を取り戻し、成長力に見合った負債額になったのです。

 しかし、ブラックマンデーやリーマンショック後はそのような傾向が見られず、多少の上下はありつつも、負債の比率が一方的に上がっています。

アメリカの公的負債と民間負債の対GDP比出所: 大和総研「コロナ禍による過剰債務リスク」2020年5月26日

 このチャートを見る限りでは、多くのウォール街の住民たちが心配する「負債起因のクラッシュ」が起きるリスクは高く、リーマンショックを凌ぐくらい大きなクラッシュが起きる可能性があるといえます。

 そう考えるなら「クラッシュなんて起きませんよ」と笑っている場合ではありません。

 クラッシュ時の保険としてゴールド(金)を買っておく意味と意義は十分にあるのです。

(本原稿は『ゴールド投資──リスクを冒さずお金持ちになれる方法』からの抜粋・編集したものです)