東日本大震災以降、家族の大切さを見直し、その関わりを深めている人は多いだろう。内閣府が2011年12月に実施した『食育に関する意識調査』によると、朝食を家族とほとんど毎日一緒に食べる人は60.3%、夕食は71.6%と、前回調査(2010年12月)より、それぞれ10.2ポイント、15.1ポイントも上昇したという。ただし、こうした調査の対象は多くが「大人」だ。

 では、「子ども」はどうなのか――。博報堂生活総合研究所が、2000年前後に生まれ、現在小学4年生~中学2年生になる「アラウンド・ゼロ世代」を対象に実施した『子供調査2012』では、その意識の変化が浮き彫りになった。

 家族と友達に対する意識の比較では、「家族の方が大切」と答える子どもが86.1%と、前回調査(2007年)より5ポイント上昇し、「友達の方が大切」は、13.8%と、逆に5ポイント減少した。

 行動面では、より変化が鮮明だ。「大切な話をどちらの方にはじめに話すか」という設問に対し、「お父さん、お母さんの方」という回答が60.1%と、前回より9.1ポイントも上昇。さらに、「家の中で一番いる場所」では、「居間」が76.2%と同13.2ポイントも増えた。「自分の部屋」は17.3%と、逆に同11.8ポイント下落している。子どもの間でも、明らかに家族への意識が高まり、それが行動にも表れているわけだ。

 リーマンショック後の不景気、それに追い打ちをかけた東日本大震災のインパクト。「2007年以前の子どもは、友達との関係も重視するなど外向きの意識も少なくなかった。だが、不景気や大震災による不安から、生存本能的に『外に向いている場合ではない』と考え、一気に内向き志向、家族重視に変わった」と、博報堂生活総合研究所の山本泰士主任研究員は説明する。

 親や子どもの変化を受け、消費トレンドも変わりつつある。人生ゲームやオセロゲームといったボードゲームなどの2011年度の市場規模が、前年比11.9%増の132億円と非常に好調だ。居間に集まった親子がコミュニケーション・ツールとして使っている姿が想像できる。

 親子で楽しめる図鑑シリーズも人気。天然の虫入り琥珀(こはく)をルーペで観察できたり、化石の発掘体験ができたりする『触れる図鑑コレクションセット』や、かつて数学嫌いだった親も一緒に学習できる『親子で学ぶ数学図鑑』など、ラインナップは多様だ。

 一方、今夏は「親子で楽しむ野外フェス」といった企画も多かった。キッズエリアや小学生チケットを用意するなど、従来大人向けだった音楽ライブを“親子仕様”に変える動きだ。

 また、子供の遊びに親が乗っかる「逆パターン」も見られる。各地で開催されている「ポケモン親子バトル」が好例だ。これはニンテンドーDS用ソフト『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』のゲーム大会に親子で参加し、他の親子と対戦するもの。子ども以上に熱を上げてしまう親もいるという。

「昔は思春期を迎えると、親と遊びに行くのを恥ずかしがる傾向もあったが、今は逆に楽しいと感じる子供も多い。“親子で一緒に消費するコンテンツ”は、時代のキーワード」と、山本氏は見る。

 ポイントは、父親の「家族サービス」でもなく、子供が「いやいや」でもなく、両者が共に楽しむことを積極的に望んでいることだ。今後もこうした傾向は強まる可能性があり、“親子共通で消費するコンテンツ”という視点は、商品やサービスを開発する際に、より重要さを増していくだろう。

(大来 俊/5時から作家塾(R)