念願のJusticeを聴講!

マイケル・サンデル ハーバード大学教授と筆者

 講義が仕事の三分の一を占める私にとって、渡米前から、ぜひ会ってみたい、と思っていた人がいる。

 マイケル・サンデル ハーバード大学教授だ。政治哲学を専門としている。

 著書や講義を通じた「Justice:What the right thing to do?」という問いかけは、国境を越え、多くの“信者”を生んできた。日本でも人気や知名度は群を抜いている。「正義とは何か?」というテーマ設定が、いまだに「失われた20年」を抜け出せず、新しい成長戦略、豊かさを追求していく渦中にある日本人の共感を呼び起こしたのだろう。

 今回のサンデル教授の講義は、ハーバード大学Institute of Politicsと英BBCによる共催だ。BBCラジオチャンネル4に「Public Philosopher」という番組があり、そのホストをサンデル教授が務めている。その収録を兼ねたものだった。

 過去に同教授は、英London School of Economicsや米University of Dallasに直接足を運び、現地の学生らと「公共哲学」を巡る議論を交わしている。その模様も、編集を経てBBCラジオで流れた。今日はサンデル教授にとってのホームグランド、ハーバード大学での開催だった。

アメリカンドリームは神話か?

講義の入場券

 10月9日、19:00。ケンブリッジはもう日が暮れていた。会場となるケネディースクールのキャンパス内にあるホール、John F. Kennedy Jr. Forumは、事前に入場券を獲得した学生たちでにぎわっていた。

「これから、サンデル流講義が始まる――。」ホールは高揚感に包まれていた。私も、サンデル教授の生の講義に触れられる幸運を噛み締めながら一番前の席に座った。

 テーマは「Who Built It? Is the American Dream of Individual Success a Myth?」(「個々の成功というアメリカンドリームは神話なのか? 一体誰が、何がそれを創っているのか」)である。