ポイントは、稼ぐ量を増やすのではなく、今あるお金の使い方を変えることである。おすすめは、「モノ」ではなく「経験」にお金を使うことだ。経験の中でも、世の中とのつながりを実感できる経験、くり返し語ることができる思い出となる経験が望ましい。あるいは、自分の理想に近づく経験や、めったにないチャンスを得られる経験もよい。こういった経験にお金を使うと、幸福度が上がる。

 また、自分のためではなく誰かのために使ったお金のほうが幸福度は高くなる。例えば寄付をすることで、家庭の所得が2倍になったのと同じくらい幸福度が増すことも判明している。大切なのは使った金額ではなく使い方である。

◆人との付き合いで幸福度は変わる
◇自分らしくいることの落とし穴

 誰しも嫌われたくないものだ。しかし、無理して好かれるよりも自分らしくいるほうが大切という風潮もある。一体どちらが私たちの幸福につながるのだろうか。

 ハーバードメン研究では、75年にわたり268名の人生を追跡し、人の幸福度に影響する要素を調べた。すると、研究対象のトップ10%の「幸せな人生を歩んだ人たち」は人生で「温かな人間関係」を築いていたという。彼らはそれ以外の人に比べて年収が高く、専門的な分野で成功を収めた人は3倍も多かった。さらにこの研究では、幼年期に母親との温かな関係が築けていた人は、そうでない人に比べて年収が約870万円も高いことが明らかになった。

 つまり幸福度や仕事の成功において、「温かな人間関係」を築けたかどうかが重要なファクターだといえる。「人から好かれなくても自分らしく生きていけばいい」。そう強がってみても、データ上では、人とのつながりを実感できない人生は幸せといえないことがうかがい知れる。

◇幸せホルモンの分泌を促す3つの方法

 では温かな関係は、どのように築けばよいのだろうか。必要なのは「人を愛する能力」だ。幸せホルモンといわれるオキシトシンの分泌を増やすと、人を愛する能力を伸ばせる。ここでは「オキシトシン」の分泌を促す3つの方法を紹介しよう。

 1つめは、「8秒ハグ」だ。オキシトシンは人と直接触れあうことで分泌される。動物とのスキンシップや握手でもかまわない。