コンビニの大量出店と歩を合わせるかたちで、ATM事業で成長を続けてきたセブン銀行。しかし、コンビニ市場の飽和とキャッシュレス決済の普及が強烈な逆風として吹き付け、屋台骨を揺るがし始めている。特集『コンビニ金融最前線』(全8回)の#3では、その最前線を追った。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)
銀行開業から20年で訪れた
ATM利用件数減少という受難
8億4900万件――。これはセブン銀行が展開するATMの年間総利用件数だ。
全国に約2万店以上あるコンビニのセブン-イレブンをはじめ、イトーヨーカドーなどのグループ内店舗や、ショッピングモールといった商業施設に幅広くATM網を張り巡らし、設置台数は2020年末時点で2万5548台にも上る。
セブン銀単体で、メガバンクなど大手銀行5行のATM合計設置台数(約2万3000台)を上回る規模だ。
セブン銀のATMの稼働率は99.98%。1台1日当たりの平均利用件数は92件で、1日約230万人が利用している計算という。
開業から20年近くがたち、「ATM覇権」をがっちりと握ったセブン銀。初年度に約1400万件だった総利用件数が63倍に膨らむなど、同社はこれまできれいな成長軌道を描いてきた。
しかし、足元ではコロナ禍とキャッシュレス決済の普及による現金需要の漸減などによって、20年度の総利用件数(予想)は前年度比4.9%減の8億0700万件と、通年ベースで初めて減少する見通しだ。