ファミリーマートを基点に、消費者金融への参入を表明するなど個人向け(リテール)金融で攻勢をかける伊藤忠商事。あえて銀行免許を持たず、規制緩和で参入障壁が低くなった分野に一気に踏み込む戦略の背景にある、大きな「挫折」とは。特集『コンビニ金融最前線』(全8回)の#1では、その舞台裏を探った。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)
成長の絵図が見えなかった
幻の「ファミマ銀行」設立構想
今から5年前、ファミリーマートと親会社の伊藤忠商事の経営陣の間で、ある構想が持ち上がっていた。
それはファミマによる銀行業への参入だ。その年、ローソンがセブン銀行を追撃するかたちで、周回遅れながらも新規参入を表明。コンビニチェーン大手3社の中で、ファミマだけが取り残される格好になり、議論は一気に白熱していった。
「銀行というブランドへの漠然とした憧れみたいなものもあった」。当時のファミマの役員はそう話すが、肝心の議論の流れは、参入とは全く逆の方向に進んでいった。
なぜならば、「いくら議論しても、銀行免許を持つことのメリットがなかなか見いだせなかった」(ファミマ幹部)からだ。
両社による議論はいつしか、銀行参入がいかに不要かを確認し合うような内容に変わっていったという。
最終的に伊藤忠とファミマは、銀行参入は不要と結論付けることになったわけだが、その理由は大きく二つに分けられる。