農協の経営悪化が止まらない。ダイヤモンド編集部の独自試算で、2022年度以降に調査対象の2割に当たる96JAが赤字になることが分かった。金融事業の減益と米価低迷が農協にもたらすインパクトを試算した。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
ワースト1位は17億円減益のJA香川県
2・3位はJA横浜、JA山口県
いよいよ農協の経営危機が現実のものになりそうだ。かねて懸念されていたマイナス金利政策による信用事業(銀行業務)の大幅減益(農協の貯金を運用する農林中央金庫〈農中〉からの利益の分配の削減)が始まったのだ。
それに加え、保険契約者の高齢化や死亡による保有契約高の減少により、共済事業も急速に収益が悪化している。
本稿では、ダイヤモンド編集部が独自試算した「JA赤字危険度ランキング」の最新版をお送りする。毎年恒例の企画ではあるが、今回のランキング作成に当たっては、特に、以下の2点に配慮する設計をした。
一つ目は、信用事業の減益想定額の算出方法を見直した。農協が貯金を集めるインセンティブとして農中から得ていた奨励金が削減されるが、奨励金の利率の低下分を、利率の対象となる額(農協が集めた貯金の半分)に乗じることで減益想定額を求めた。二つ目は、近年の農協の決算で共済事業の収益が急速に悪化していることを踏まえ、試算で使う粗利の減少率を調整した。
その結果、調査対象である504JAのうち、実に96JAが2022年度以降に赤字に転落することが判明した。
農協の経営が傾けば、組合員は出資金が戻ってこなかったり、追加の増資を迫られたりといった実害を被ることになる。何より、農協の地盤沈下がもたらす地域経済への悪影響は計り知れない。
それでは実際に、「JA赤字危険度ランキング2021【ワースト30】」を見ていこう。ワースト1位はどの農協なのか。
下表は、ダイヤモンド編集部の独自試算の結果、金融事業の減益想定額が大きかった農協を順に並べたものである。
1JA当たりの金融事業(信用・共済事業)の減益想定額が最も大きかったワースト1位はJA香川県だった。その減益額は年間17億6500万円に上る。
ワースト2位は神奈川県のJA横浜で16億0100万円、ワースト3位のJA山口県は15億円2000万円の減益が見込まれる。
JAが経営基盤の弱体化を防ぐには、金融以外の本業、つまり農業関連事業で稼がなければならないのだが、JA横浜など都市部の農協や有力農家から見放された農協には厳しい未来が待ち受けている。
手っ取り早く稼げる金融事業に人材を集中させ、本業である農業関連事業をおざなりにしてきた農協は、重いツケを払うことになるのだ。