2020年はオリンピックの開催など、華々しく盛り上がる年になるはずだった。しかし新型コロナウィルスの流行で経済がストップし、多くの業界が危機に見舞われている。
コロナは一時的に沈静化したかに見え、政府はGoToキャンペーンの旗を振ったが、冬になってまたもや感染者数が急増し、先の見えない状況になっている。
そんな中で、奥野一成氏率いる農林中金バリューインベストメンツは、個人向けファンド「おおぶね」などで好成績を叩き出している。
『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなっているカリスマファンドマネージャーは、現在のコロナ下の日本をどう見ているのか?2021年はどんな年になると読んでいるのか?じっくりと話を聞いてみた。
取材/亀井史夫(ダイヤモンド社)

コロナ リモートPhoto: Adobe Stock

リモートワークでできること、できないこと

――リモート会議やリモートワークが一般化してきましたが、コロナが収束しても続くと思いますか。

奥野一成(以下、奥野) 業種と業界によって違うと思うんですけど、恐らくリモートワークはこれからも続くでしょう。例えば銀行員や会計士のような、もう「1を作ること」が最初から決まっている業態であれば、それをいかに効率的にやるかの勝負であって、それを軽井沢で行おうが、京都で行おうが、東京のオフィスで行おうが、あまり関係がありません。そのような業態であれば恐らくリモートワークで大丈夫だと思います。

それが難しいのが、「ゼロから1を作り、更に工夫を凝らして1.1、1.2…と加えていく」ような知的生産が求められる業界。例えば僕らがやっている投資であるとか。あとは、階層でいうと、企業戦略を考えるような、どのように投資をして、いかに価値を上げていくのかということを絶えず考えなきゃいけない人というのは、恐らくリモートワークではこなせないことが普通に出てくると思います。

例えば弊社で言うなら、投資のアイデアというのは、色々なところで本当に秒速で出てくるわけですよ。こういう状態においては、残念ながらリモートワークでは投資アイデアは作れないですよね。周りの企業を見ていても、経営層になればなるほど、みんな会社に出てきている人が多いですね。弊社の場合は緊急事態宣言が終了して以降はリモートワークを終了して、原則全員出社にしました。もちろん、感染防止には最大限配慮していて、例えば通勤の混雑を避ける観点で11時-16時のコア勤務体制にしています。

――やっぱりリモートだと情報が限られてしまう?

奥野 アナリストが議論したことを受けて、「いいアイデアだから違うアナリストにも共有するために15分後にzoomやりましょう」みたいな悠長なことはやってられないんですね。秒速で動いていく世界なので。脳をイメージしていただけるといいかもしれないです。「シナプスがつながっている状態」こそが、いいアイデアがたくさん出るということだと思っています。あとは、やはりそのアイデアの背景にある人の「熱量」ですよね。結局「熱量」というのは、残念ながらzoomでは伝わらないです。