負債、資本の増加は、現金の増加をもたらす

林教授 繰り返しになるが、BS3の左右の金額は天秤のようにバランスしている。そこで現金以外の資産だけが5増えたら現金はどうなるだろう。

カノン 負債と資本は変わらないから、現金が5減少すれば左右はバランスします。

林教授 そうだね。では負債が5減ったら、現金はどうなるだろう?

カノン 右側が5軽くなりますから、左側の現金を5減らせば左右の金額はバランスします。

林教授 資本が15増えたら?

カノン 現金が15増えることでバランスします。

林教授 正解だ。以上からわかることはこうだ。

1.現金以外の資産の減少は現金の増加をもたらす
2.負債、資本の増加は現金の増加をもたらす
3.1.2の逆は現金に対して逆に作用する

林教授 BS4は、現金とそれ以外の資産、負債、資本の増減の関係を表したものだ。

カノン これが、さっき先生がおっしゃった「現金が500万円増えたということは、現金以外の資産と負債と資本の増減額が500万円増えたことでもある」という意味なんですね。やっとわかりました。

林教授 ここまで理解できたところで、貸借対照表を組み替えてみよう。この図を見て欲しい。

林教授 流動資産と流動負債を現金と売掛金と商品と買掛金だけとしよう。現金を除いた運転資本は(商品+売掛金-買掛金)だね。

カノン はい。

林教授 流動負債の短期借入金は長期借入金と一緒にまとめて有利子負債とする。

カノン かなりシンプルになっていますね。

林教授 利益剰余金は、当期の税引き後当期純利益だったね。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。