写真:ゼライスの外観
宮城県多賀城市にあり、仙台港を望むゼライスの外観。東日本大震災が発生した、2011年は創業70周年を迎える節目の年だったという

東日本大震災の発生から10年がたつ。津波によって東北の風景が一変したその日、宮城県が本社の老舗ゼラチンメーカー、ゼライスもまた、津波にのまれて甚大な被害を受けた。未曽有の大震災が彼らにもたらしたものとは――。(清談社 真島加代)

クジラ公害を
解決に導いたゼラチン

 家庭用ゼラチン「ゼライス」で知られるゼライス(https://www.jellice.com/)。食用にとどまらず、医薬用、写真用、工業用のゼラチンなど幅広く扱っている同社は創業時から宮城県に拠点を置いている。

「当社と宮城県の関係は、明治期に創業した親会社の時代から続いています。親会社の稲井善八商店は、捕鯨が盛んだった宮城県北東部の牡鹿半島で、鯨肉加工業を営んでいました」

 そう話すのは、ゼライス総務部人事担当の北島一浩氏。“捨てるところがない”といわれるクジラだが、頭部だけは使いみちがなく、廃棄せざるを得なかったという。

「当時は多くの業者がクジラの頭を海に捨てていたので、海が汚れて腐敗したニオイが広がる“クジラ公害”が問題になっていたんです。そこで生化学の権威だった東北帝国大学の井上嘉都治博士にご相談したところ、『クジラの頭部からコラーゲンが抽出できる』(*)という助言をいただき、世界で初めてコラーゲンの工業化に成功。1941年にはゼライスの前身となる宮城化学工業所を仙台市若林区に設立しました」

 2003年には「ゼライス」の発売50周年を記念して、社名をゼライスに改めた。その後も仙台港に程近い宮城県多賀城市に本社を構えるなど、宮城県とゼライスは、深い縁でつながっているのだ。

(*)…現在のゼラチンの原料は豚の骨や皮、牛の骨や皮、魚の皮など。