2022年3月卒業予定(現在大学4年生など)の学生の就職活動が本格的に始まった。言うまでもなく、学生にとっての就活は、企業側からみれば“人材の採用”であり、それぞれの企業の人事戦略に基づいて行われるものだ。学生は、目指す業界や企業の“ウィズコロナにおける企業経営のあり方と人事戦略の方向性”を知っておくことが就活成功のカギとなる。(ダイヤモンド・セレクト「息子・娘を入れたい会社2021」編集部)
*当記事の前段となる 新型コロナウイルス感染症拡大で激変する採用市場(1) 新型コロナウイルス感染症拡大で激変する採用市場(2) 22年卒の就活戦線大予測!採用人数は絞られスケジュールは前倒しに 新卒一括採用、世界でも珍しいルールが日本で定着した理由 コロナで就活はどう変わっていく?学生の志向、スケジュール… も合わせてお読みください。
*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2021」の巻頭特集記事「コロナ禍で大激震!“就活戦線”のいま、これから」の一部を転載したものです(加筆修正あり)。
かつての大手人気企業もコロナショックで窮地に
今回のコロナショックが、多くの企業に与えている深刻な影響が具体的な数字として次第に明らかになってきている(2020年12月時点)。
特に衝撃を与えたのが、2020年10月27日に行われたANAホールディングスの第2四半期(中間期)の決算発表だ。売上高が前期比で72%減り、1884億円の赤字となった。通期では5100億円の赤字(前期は276億円の黒字)になる見通しだという。最終赤字は11年ぶり、赤字幅も過去最大だ。固定費の削減が急務となり、同社は機体などを減らすほか、人件費にもメスを入れる。一般社員の年収は3割ほどダウンするほか、400人以上を外部企業に出向させたり、希望退職も募る。数年前まで、同社は、学生の人気企業ランキングでは上位の常連だった。その人気企業でさえ、コロナショックという経営環境の激変の前では、あっという間に窮地に陥ることに多くの人が驚いた。
日本企業をとりまく経営環境の変化を象徴するのが、時価総額ランキングの顔ぶれだ(図表13)。
親(保護者)世代が就活をしていたバブル期のピーク時(1989年)は、国内企業の時価総額ランキングのトップ10のうち6社までが銀行(都銀)だった。当時、都銀は13行あり、いずれも多くの学生にとっての憧れの就職先として、就職人気ランキングでも上位を席巻していた。
しかし、都銀はこの30年で吸収・合併を繰り返し、ほぼ3つのメガバンクに統合された。その間、多くのリストラがあった。2020年のいま、メガバンクはどこも時価総額でトップ10に入っていない。今後、店舗網の整理やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入でさらに人員の削減が進むといわれる。また、2020年に入ってからも、コロナショックの影響で、デジタルトランスフォーメーションの波に乗った企業が躍進する一方、「重厚長大」といわれる伝統的な企業が軒並み苦戦。サービス業でも、小売ではアパレルや百貨店などが大打撃を受ける一方で、EC通販などはむしろ成長を加速している。
就活中の大学生にとって、30年という期間は、まさに社会人としてのキャリアと重なるスパンだ。その間、ひとつの業界、ひとつの企業でキャリアを過ごせる確率はかなり下がってきている。現在の就職人気ランキングだけを参考にして、業界や企業を選ぶのは、あまりに近視眼的で、賢明なスタンスではない。