今多くの事業会社が米国のベンチャーキャピタル(VC)への出資を検討し始めている。DX(デジタルトランスフォーメーション)など、自社の事業の変革や、新事業の創造のためにスタートアップ企業とのオープンイノベーションを進めようという意思の表れだろう。
ただし、「VCとハサミは使いよう」である。うまく使うには当然、VCの生態をよく理解する必要がある。
VCは投資収益(リターン)を得る目的のファンドだが、その方法が他のファンドと全く違う。既存企業の未公開株あるいは公開株に投資するエクイティファンドでは、おおむねどの投資先企業からもリターンがあり、業績の良い企業を選ぶのが鍵となる。
一方、VCはゼロから事業を立ち上げるスタートアップ企業への投資からリターンを得る。しかし、かなりの数の投資先企業は倒産し、生き延びた企業からもそこそこのリターンしか得られないことが多い。実は、ファンドのリターンは、ごく少数の企業が大成功して株主価値が爆発的に高まり、もたらされることがほとんどだ。
VCへの投資から得られる価値は、金銭であるリターンの他に、ビジネスモデルなどの戦略的な価値がある。スタートアップ企業はまるで生き物のように成長する。そのため、VCに投資する事業会社が得られる戦略的な価値は、VC自体の投資ステージによって異なる。