このところソーシャル旅行サービスが盛り上がりを見せている。この欄でも紹介したtrippieceは、ユーザー同士が旅のプランを練り上げ、ツアーを催行する旅行社とマッチングさせるサービスだ。滞在先を探せるP2PのマーケットプレイスAirbnbは、世界2万4000都市へと広がっており、1日の成約件数が6万を超すまでに成長している。背景には、旅先で気軽に利用できるスマートフォンの普及があるのは、言うまでもない。
9月にリリースされた「Meetrip」もそんな潮流の一つと言えよう。旅行者と個人ガイドをマッチングするマーケットプレイスである。コンセプトは、「現地の人と旅をする」だ。
旅行ガイドといっても専門資格は必要ない。案内するのは、その街をよく知る一般の人々。ガイド希望者は自分が提供したいプラン内容、所要時間、料金をサイトに登録する。旅行者はそれを見て、自分のツアープランや趣味嗜好に合ったガイドを選ぶ。条件が合えば契約成立。サイト上で決済し、あとはガイドをしてもらうという流れだ。
「いまや、ほとんどの情報は、ネットで検索することができます。でも、旅先の本当のリアルは、ガイドブックでもネットでもなく、その土地の人の中にしかありません。旅を通じて、旅行者が住人と出会って、お互いに学びあい、そしてリアルにつながっていくことが、世界を変えていくと信じています」(Duckdive CEO 貴山敬氏)
ガイドブックには載っていないディープな場所や、生活者ならではの視点で旅を作りあげていくスタイルだ。現在はβ版の段階。東京と台北の2都市で実験的に展開されているが、年内にはアジアの10都市でのリリースを目標に掲げている。
東京のページを見てみると、外国人旅行者向けに様々なプランが並んでいる。ラーメンの食べ歩き、居酒屋ツアー。サブカル人気を受けて、秋葉原のガイドプランも多い。
このMeetrip、じつは旅そのものよりも、人との「出会い」に力点が置かれている。誰かと出会うことで旅を深いものにし、学びの場にも変えていく。一緒に食事をし、会話を楽しみ、共通の趣味などを分かち合えば、旅の印象はずいぶん色濃くなるだろう。
確かに、旅に出たら現地の人と友だちになってみたいという欲求はある。ただ、「出会い」にはリスクもあり、相応の安全性を事前に確認できることも必要だ。現在、Meetripの登録にはFacebookのアカウントが必要となっている。Facebookの実名制によって、ある程度の安全性を担保する形だ。実際、ガイドをお願いする場合、相手の投稿履歴などを見て、チェックしているユーザーが多い。しかし、これだけでは不十分。今後は様々な評価制度を導入して、安全性を高めていく方針だという。
旅に限らず、知識やスキルなどを売買できる個人間のマーケットプレイスが、いま急増している。自分の能力を提供し、副業を展開することが、比較的容易にできる時代になった。
とはいえ、スキルの提供となると、それなりにハードルも高い。Meetripを利用して週末、自分の住む街を案内する。この程度なら、すぐにでも始められるかもしれない。ビジネスマンならば、東京のビジネスシーンや文化エリアを自分なりにコーディネイトしてみるのも面白いだろう。新たな出会いから、次なるものが生まれる可能性は大きい。
(吉田 由紀子/5時から作家塾(R))