便利なクラウド会計ソフトが登場したことで、帳簿作成や確定申告をスムーズに行えるようになった。しかし、意図せずに処理を誤ってしまうリスクもあるという。また、昨今増えているキャッシュレス決済の入力にもわながある。いずれにも気を付けないと税務署に目を付けられてしまう。特集『最強の節税』(全22回)の#16では、クラウド会計ソフトで注意したい「三つの落とし穴」について解説する。(元国税専門官 小林義崇)
クラウド会計ソフトの便利さが裏目に
税務署から目を付けられる落とし穴とは?
時間やコストをかけずに帳簿作成や確定申告をしたい……。事業者の多くがこんな思いを持っているのではないでしょうか?
事業をしている人にとって、帳簿作成は面倒なものです。しかし、正しい帳簿がなければ、誤った内容で税務申告を行うことになるため、税務調査を受けて追徴税を課されるリスクが生じます。
正しい帳簿を作る上で、税理士に依頼するのも一つの方法ですが、低コストで手軽に使える「クラウド会計ソフト」を利用している人も多いでしょう。いまやクラウド会計ソフトは、「freee」や「マネーフォワード クラウド」をはじめ複数のサービスがあり、月額1000円程度の料金で、請求書発行から帳簿作成、資金繰りの管理、税務申告までスムーズに行うことができます。インターネットを介してシステムにアクセスできるため、場所や端末を問わずに利用できる点もメリットです。
私が考える、クラウド会計ソフトの最大のメリットは、「取引の仕訳入力を自動化できる」という点です。従来の会計ソフトは、売り上げや経費の支払いなどが発生するたびに仕訳を手作業で入力するのが一般的でした。ところがクラウド会計ソフトでは、銀行やクレジットカードなどの口座と連携させることで、必要な情報を取り込み、仕訳入力をほぼ自動化することが可能です。
しかし、この自動化の機能こそが、クラウド会計ソフトの落とし穴でもあるのです。また、昨今増えているキャッシュレス決済の入力にも「わな」があります。いずれにも気を付けないと税務署に目を付けられてしまいかねません。そこで、税務調査で目を付けられやすいクラウド会計・キャッシュレス決済の「3つの落とし穴」と対策について、元国税専門官の立場から解説します。