税務調査の現場では、修正を迫る調査官とそれを拒否する税理士の駆け引きが行われる。実際にどんなやりとりがあるのか。また、納税者に利益をもたらす税理士の振る舞いとは?特集『最強の節税』(全22回)の#17では、税務調査立ち会いの実態をレポートする。(ダイヤモンド編集部 山出暁子)
「重加算税」にしたがる調査官と
何が何でも修正に応じたくない税理士
税務調査の実地調査は、申告書にはなかったもの、申告書の内容と違うものを見つけ出して修正させ、追徴金を取りたい税務調査官と、ビタ一文でも修正申告させたくない納税者側の税理士とのプライドを懸けた“闘いの場”になる。
ペナルティーとなる税金の加算税率は、税制を理解しておらず、知らずに申告していなかった「うっかりミス」と認定されたような場合には過少申告加算税で10~15%。だが、仮装・隠蔽・不正行為で「脱税」として認定されてしまうと重加算税で35~40%も追徴され、納税金額にも大きな差が出る。実地調査の現場では、自身の評価のためにも重加算を狙ってくる調査官が多いといわれ、それを阻止したい税理士との間で駆け引きが行われるのだ。
ここでまず、税務調査についてまとめておこう。
税務調査には大きく分けて(1)税務署、(2)国税局資料調査課、(3)国税局査察部の三つの調査がある。(1)は事前通知があり「任意調査」と呼ばれるものだが基本的に断ることはできず、法律上、申告内容の立証責任は納税者側にある。(2)も同様の任意調査で税理士の立ち合いが可能だが、事前通知はなく、法人の場合は関係先の数カ所を一斉に調査するなど(1)に比べ大型案件が対象になる。(3)は、いわゆる「マルサ」と呼ばれる国税庁の調査部隊がやって来るもので、裁判所の許可を得て「令状」を盾に行われる強制捜査。巨額な脱税が疑われる案件が対象だ。朝一番に突然やって来て、納税者側は一切手出しできない。現在、税務調査で行われているものの多くは(1)である。
そして、実は調査に対しては、ただオロオロと慌てて調査官の主張を受け入れるだけが対処法ではない。事前や事後にできる対策がある。多くの調査に立ち会ってきた複数の税理士に、その方法を聞いた。
調査の現場では、実際に調査官と税理士でどのような駆け引きが行われているのか。調査官にも一定の“手口”のようなものがある。また、税理士はどのように調査官の主張を覆すことができたのか。三つのケースから生々しいやりとりを見ていこう。
Aさんの夫はがんを患い、余命宣告されていた。亡くなる少し前、今年が最後になりそうだというクリスマスに、夫は初めてAさんに50万円ほどの指輪をプレゼントしてくれたという。
夫が亡くなった後、相続税の申告をするとしばらくして税務調査官がやって来た。そこで夫が指輪を買った際に支払ったクレジットカードの記録を目にした調査官が「この50万円は何ですか?」と指摘。Aさんが「夫が最後のクリスマスプレゼントだと言ってくれたんです」と涙を浮かべながら差し出した指輪を見て、その調査官は「ああ、これは贈与ですね」と言い放ったという。