宗教法人は原則非課税であるため、多くの人が「坊主丸もうけ」と思っているかもしれない。しかし、実際には「富める寺」と「廃れる寺」の二極化が起こっている。広大な貸し土地の賃料や観光収入によって潤う寺院では、脱税や背任、果ては数年前に都内神社で起こった跡目争いによる殺人事件などが報じられた。ところが、これらはごく一部の富める寺社の問題で、その他の多くは経済的に困窮している。特集『最強の節税』(全22回)の最終回では、お寺の"経営"と継承に関する厳しい現状と、その解決策を解説する。(元国税査察官・税理士&僧侶 上田二郎)
コロナ禍で葬儀も自粛!
お寺が瀕死の状態
コロナ禍によって世界経済が混乱し、先行きに暗雲が立ち込めています。葬儀ビジネスも大混乱していて、その影響によって葬儀や法事が省略され、寺院も大きなダメージを負っているのが現状です。
新型コロナウイルスの襲来が、お金のかかる葬儀に違和感を持っていた人にその規模を縮小する大義を与え、「お坊さんのいないお葬式」の出現を許したと仏教界は考えているのかもしれません。しかし、コロナ禍以前から、既に寺院の運営は行き詰まっていました。
国の経済が困窮すればなおさら、一度崩れた葬儀の形式は戻りません。都市部では、今までのように親戚が集まって近所の人が焼香に駆け付けるというような葬儀はなくなり、残るのはせいぜい家族葬くらいでしょう。多死社会にもかかわらず、葬儀の場所に僧侶がいない光景が現実的になりつつあり、今後一般の人は仏式葬儀を選択しなくなることもあり得ます。
また、少子化も寺の経営にマイナスです。単純に考えると、出生率が1に近づくほど、一人っ子同士の結婚が増えます。とすれば、夫婦それぞれが両家の墓を守らなければならなくなり、さらにその子供たちも一人っ子同士で結婚すると、四つの墓を守らなければならない構図になります。
そのために墓じまいをして、子供たちに迷惑を掛けたくないと考えるのは仕方がないこと……。しかし、寺院側にその危機感が乏しいのが実情です。お寺の業界は自ら発信することがご法度という文化。その結果、危機を積極的に発信する人が少なかったことも影響しているでしょう。
年収300万円に満たない宗教法人
異常気象が追い打ちも
多くの人が思っている「坊主丸もうけ」。いつからこの言葉が定着したのでしょうか。お坊さんは税金を払っていないと思っている人もいるかもしれませんが、「税金免除」というイメージは大きな誤解です。