ドル/円もクロス円(ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も下値(円高値)不安がなかなか消えない状況が続いています。ではこのまま安値(円高値)更新となっていくのでしょうか。問題は、短期的な行き過ぎの調整なしで、このまま安値更新となるかということに尽きるのではないでしょうか。

 下図は、ドル/円の5年移動平均線からのかい離率を見たグラフです。前回のレポートで書いたように、ドルの対円相場は、5年線からのかい離率がこの10年ほど±10%を大きく超えないといった状況が続いてきました(「米ドル/円『10年の常識』、豪ドル/円『20年の常識』は崩れるのか?」参照)。

 しかしそれは、11月末にマイナス14%となり、95年以来の大幅な5年線からのかい離となりました。

 ドル/円において、「5年線をはさんで±10%といった狭い範囲での小動きが続く」という「10年間の常識」が崩れ始めているわけです。つまり、ドル/円は10年前までのように、よく動く相場に戻り始めていると言えそうです。

 ところで、かつてのドルは、5年線を30%以上も上回ったことも、逆に下回ったこともありました。そんなかつてのよく動く時代のドル/円に戻ったということなら、5年線からのかい離率がマイナス10%を超えてきたからといってすぐに止まる保証はなく、むしろ中期的にはマイナス30%以上にかい離率が拡大していく可能性も覚悟する必要があるでしょう。

 ドル/円の5年線は11月末現在で111円程度ですから、それを30%以上も下回るということは80円を割れる計算になります。ドル安・円高が行き過ぎを拡大していくなら、単純計算でもそのくらいはありうるということになるわけです。

1ユーロ=1ドル前後までユーロ安と
ドル高が進んでも不思議はなし!

 同じように、ユーロ/ドルも見てみましょう。ユーロ/ドルの5年線からのかい離率は、10、11月末でようやくマイナスに転じてきたところです。これを見る限り、まだ行き過ぎたユーロ高の修正が終わったばかりで、今後行き過ぎたユーロ安を拡大していく可能性はあるということになるでしょう。

 かつてユーロ/ドルは、5年線から20~30%以上もかい離したことがありました。今回もそういった状況に向かうなら、1ユーロ=1ドル前後までユーロ安・ドル高が進んでもおかしくないといった計算になるわけです。

 こんな具合に、長期移動平均線からのかい離率で見ると、中長期的な下落余地がまだ残っている相場がある一方で、そうでない相場もあります。

 以前も書いてきたように、豪ドル/円や英ポンド/円は、5年線からのかい離率が過去の実績から見てほぼ下限まですでに拡大しています(「円高は80円割れに向かうのだろうか?」などを参照)。

 これらの場合は、中長期的な底値圏に達している可能性もあるでしょう。


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