今までは、日本企業の視点から、ミャンマー進出における論点を見てきた。今回からはミャンマー企業の視点で、ミャンマーでのビジネスの現状と、日本企業に対する期待感などについて見ていきたいと思う。
Photo:Japan Asia Strategic Advisory
ミャンマーに数多くの企業がある中で、インタビュー先には、なるべくミャンマー企業の本音や、ビジネスの現況を聞き出せそうな会社を選んだ。従って、旧国営企業や政府により近い企業よりも、独自で現在の地位まで築きあげた企業を対象に、彼らの生の声を拾うよう努めた。国有工場の払下げで比較的有利な条件からスタートする企業の経営者よりも、徒手空拳で立ち上げていった創業者から話を聞いたほうが、人生ドラマとしても面白い話が聞けると思ったからだ。
今回ご紹介するのは、ミャンマーにおいてキャンディーをはじめとする製菓を製造販売するTin Ye Win Manufacturing Co.,Ltdだ。会長のYe Aung氏が1978年に菓子販売会社として創業し、1998年よりミャンマーで初めて菓子製造を開始。その後も拡大を続け、一代でミャンマーのトップレ ベルのキャンディー会社まで成長している。彼らの成長の過程を見ることで、ミャンマー企業側の視点からのビジネス環境を見ていきたい。
ないないづくしの中からの創業
ヤンゴンから車で1時間ほど郊外の工業団地。建設機械の会社や、電機会社など、幅広い業種の工場が立ち並んでいる中、大型の輸送車両がひっきりなしに行き来している。その一角に、比較的新しい工場が忽然と現れた。2年前に建設された工場だけに、新しさが目を引く。今回は、会長と、彼の姪2人と甥1人の4名がインタビューに同席してくれた。
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――まずは、ご経歴とこのビジネスを始めた経緯からお伺い出来ますでしょうか。
会長 私の祖父母が中国からミャンマーに移住しており、私はその3代目に当たります。私は8人兄弟の長男で、小さいころはとても貧しく苦しい生活だったのを今でもよく覚えています。私は高校を卒業する際に、学校での成績から大学に行く資格がありましたが、家計を少しでも助けるために、あえて大学には行かず、ヤンゴンで仕事を始めました。その時私は16歳でした。ヤンゴンでは、最初砂糖を販売する会社で勤めはじめ、酒屋や、他の食品関連の会社でも働きました。そして1978年、私が20歳の時に独立して、お菓子類の販売を手掛ける会社をはじめました。その後しばらく、菓子類をはじめとする食料品の販売を行っていましたが、1998年から自らキャンディーの生産を始めました。