名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第39回。「口腔顔面痛」医療の普及に尽力してきたパイオニアである和嶋浩一歯科医師(慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室非常勤講師)を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
「首から上の謎の痛み」
最も多い原因は筋肉のコリ
“隠れ患者”はかなりの数に上ると推察されるのに、なかなか知名度が上がらず、正しい治療法も普及しない疾患に「口腔顔面痛」がある。和嶋浩一歯科医師(日本口腔顔面痛学会・顧問。慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室非常勤講師)は、25年以上も前からこの疾患の治療や研究に携わり、「口腔顔面痛」医療の普及に尽力してきたパイオニアだ。
口腔顔面痛とは、非歯原性の歯痛、歯肉痛を含めて舌、口腔粘膜の痛みなど口の中のいろいろな痛み、顎の痛み、顔の痛みなど全般の総称で、「首から上の謎の痛みは、ほぼ口腔顔面痛」ともいわれる。場所的には、病態にかかわらず、眼窩外耳孔線(目じりと耳の穴の中心を結ぶ線)より上に感じる痛みは頭痛、それより下で頸部(首)より上、耳たぶより前方の痛みは「顔面痛」と規定されている(国際頭痛分類による)。
ただし、頭痛の中でも患者が最も多い緊張型頭痛は口腔顔面痛とオーバーラップする部分が大きいし、歯科のポピュラーな病気とされている顎関節症も含まれる。