ケース(1)
Tさんが52歳でリタイア

【52歳以降のTさんの収支など】
・年間収入額:480万円(不動産収入のみ)→700万円(年金込み、65歳以降)
・年間支出額:900万円(生活費+教育費、52~54歳まで)→800万円(生活費のみ、55歳以降)
・年間貯蓄額:360万円

 最初に、1年後、52歳でTさんが早期リタイアした場合を考えてみましょう。記載の通り1年間で360万円の貯蓄ができるとすれば、1年後には現在保有する金融資産3100万円が3460万円に増えます。

 相談文には「退職金が2500万円」と記載がありますが、早期退職をするので少なめに見積もって1800万円としましょう。金融資産3100万円と合計すると、早期退職時に4900万円を保有していることになります。

 また、奥様も働きたくないと思っている旨が記載されています。そのため、今回は奥様も同時に退職すると仮定して、退職後の収入は480万円(不動産収入のみ)とします。

 一方、1年後の支出項目は、大学3年生の次男が卒業して教育費の支払いが終了しているので、生活費の900万円だけになります。2人の息子は社会人ですが、独立(家から出る)するのは便宜上、Tさんが55歳の時に2人同時とします。

 早期リタイア後3年間の年間支出は900万円、年間収入は480万円とすれば、赤字額は420万円となります。つまり、55歳までに420万円×3年間=1260万円の金融資産を取り崩すことになります。そのため、55歳時点での金融資産の残りは、4900万円−1260万円=3640万円になります。

 55歳以降は同居中の息子が独立するので、生活費を800万円に減額できると仮定します。年間収入は480万円(不動産収入のみ)とすれば、年間の赤字は320万円です。60歳までの5年間の赤字は、年額320万円×5年間=1600万円になります。

 この赤字額を55歳時点の金融資産額から差し引くと3640万円−1600万円=2040万円となります。年金の受給は65歳からと仮定すると、もう5年間、前述の赤字額が続きます。つまり、さらに1600万円を金融資産から取り崩す計算です。すると、65歳時点の金融資産額は、2040万円−1600万円=440万円になります

 ただし、Tさんは車を6台所有しています。もし6台全ての車を買い替えれば、65歳を迎える前に金融資産が底を尽く可能性があります。反対に早いうちに保有台数を6台から減らしていけば、金融資産は440万円より増えていることになるでしょう。

 さらに、65歳より先の試算をしてみましょう。Tさんは65歳から年金を受け取ることになりますが、早期退職で納付した年金額が少なくなるため、受け取れる年間の年金額は、Tさんが記載していた350万円から2割減の280万円とします。

 不動産収入が480万円あるので、収入は280万円+480万円=760万円です。手取額で700万円とします。支出は55歳以降から変わらず800万円とすると、毎年100万円の赤字が出ます。

 Tさんが65歳時点で持っている金融資産は440万円ですから、4年強で底を尽くことになります。早期退職の実現は厳しいと言わざるを得ません。