「天才・小池百合子」の巧みな戦略

 では、いったいどちらが先に「五輪中止」を掲げるのか。大方の予想では、「天才・小池百合子」に軍配が上がると見られている。

 これまでも小池都知事は、政府のコロナ対策の「先手」を打つというスピンコントロール(情報操作)で、「頼りにならない政府と比べると、小池さんは頑張っているなあ」というブランディングに成功し、昨年6月時点では7割という高い支持率も得ている。

 また、女性蔑視発言で森喜朗氏への国民の批判が高まった絶妙なタイミングで、四者会談を拒否することを表明するなど、小池氏の国民の不満の方向性、ピークを捉える「選球眼」に関しては、その辺の政治家は足元にも及ばない。

 例えば、菅政権が「アスリートにワクチンを優先的に接種させるべきか」などとじっくり検討しているうちに、小池都知事が「本日、コロナ感染状況を踏まえて、東京都としては五輪を中止すべきだとバッハ会長に申し上げました」などと不意打ちを喰らわせる可能性はゼロではない。

 ただでさえ「感染拡大を防ぐために何もしていない」なんて叩かれる菅政権の評価は地に落ちるだろう。

 本当は誰よりも通常開催したいという気持ちがありながらも、国民の命を守るために、苦渋の「英断」を果たした女性リーダーとして小池都知事は評価され、「日本初の女性首相」という野望にまたひとつ近づく。一方、菅首相は「決断できないリーダー」「五輪に固執する既得権益おじさん」というようなネガティブイメージが定着するかもしれない。

 そうなれば、実際に五輪が中止になるかどうかはさておき、菅政権の支持率はガクンと落ちる。現時点で有力視されている9月の解散選挙の結果もかなり厳しいものとなり、「菅おろし」がスタート。有力な「ポスト菅」も見当たらないなかで、安倍晋三元首相の「復権」も現実味を増しそうだ。