野心的な計画をぶち上げた三部敏宏・ホンダ社長野心的な計画をぶち上げた三部敏宏・ホンダ社長。2040年に脱ガソリン車を完成させる方針だ Photo by Fusako Asashima

三部敏宏・ホンダ社長が長期目標をぶち上げた。その中身は、ホンダが得意とする領域のみならず、トヨタがリードする燃料電池車や全固体電池にも及ぶ野心的なものだった。ホンダに勝算はあるのか。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

「ホンダには独創的でありたいというこだわりが強い人材が集まっている。常に、本質と独創性にこだわり続けていきたい――」

 4月に就任した三部敏宏・ホンダ社長が極めて野心的な将来計画をぶち上げた。国内自動車メーカーとしては初めて、2040年に販売される新車全てを電気自動車(EV)と燃料電池車(燃料が水素。FCV)に転換する“脱ガソリン車”宣言をしたのだ。

 チャレンジングな目標に対する社内外の反響は大きい。三部社長の出身である本田技術研究所のエンジニアは「負けず嫌いな三部さんのキャラクターが色濃く反映されたスピーチだった」と言う。

 八郷隆弘・前社長が英国工場の閉鎖や派生モデルの削減といった構造改革にめどを付けた直後でのバトンタッチ。今が守りから攻めへの転換点であるとして、強気な計画は社内や株式市場ではおおむね好感されているようだ。

 しかし、である。この所信表明を心中穏やかには受け入れられない自動車メーカーが、ただ一社存在する。世界の新車販売で首位に立つトヨタ自動車だ。