脱炭素の最強カード#3
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にわかに、米アップルが手掛ける電気自動車(EV)プロジェクトの報道合戦が過熱している。世間の興味はアップルカーの製造委託先に集中しており、その候補として日系自動車メーカーの名も取り沙汰されている。アップルの「下請け」依頼を引き受ける自動車メーカーはどの企業になりそうなのか。特集『EV・電池・半導体 脱炭素の最強カード』(全13回)の#3では、これまでサプライヤー(自動車部品メーカー)ピラミッドの頂点に君臨してきた完成車メーカーの地位を脅かす「三つの危機」に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

アップルが日産とホンダの技術者に明かした
「自動車製造」構想の中身

 2月に開催された決算会見において、内田誠・日産自動車社長が発言した内容が、米アップルとタッグを組むのではないかという憶測を呼んでいる。

 記者から、アップルが開発している電気自動車(EV)、「アップルカー」の製造委託先になる可能性について問われ、「自動車産業の枠を超えた活動が必須。優れた経験を持った企業とのパートナーシップ、コラボレーションは選択肢である」(内田社長)と回答したからだ。これが提携に含みを持たせた発言として受け止められたことで、世間の注目が集まったのだ。

 実際には、アップルプロジェクトが日産の経営会議で議論された形跡はない。それどころか、決算会見直後に、ナンバーツーのアシュワニ・グプタ日産COO(最高執行責任者)が「あの(アップルの)話は本当なのか?」と間の抜けた発言をしている。少なくとも、日産経営陣がオーソライズして動いている話ではないということだ。

 さらに言えば、秘密主義を貫くアップルと本気で製造委託先の契約を締結する場合、その提携内容やプロセスについては秘密保持契約でガチガチに縛られて情報が管理される。“下請け”であるサプライヤーはノーコメントを貫き通すしかないのが通常だ。

 それでも、かつてアップルが日産を製造委託先候補の1社として視野に入れていたことは事実のようだ。

 さかのぼること5年前、2016年のことだ。日産のエンジニアが米シリコンバレーにあるアップル本社を訪れていた。当時、アップルはEVの自動運転システムの開発を手掛けており、米フォード・モーターから人材を引き抜くなど自動車開発に積極的だった。そして、現在と同じように製造委託先を探していたらしい。

 日産より少し前の時期に、アップルはホンダにも声をかけている。自動車参入のためのヒアリング調査を兼ねて、自動車メーカーなど複数の候補企業と面会を重ねていたようだ。

 では、アップルが日産やホンダに明かした「自動車構想」の中身とは、実際にはどのようなものだったのだろうか。