ロックダウンが解除されたロンドン足もとでコロナ感染者が急減している英国。しかし、経済への楽観論は禁物だ Photo:Dan Kitwood/gettyimages

感染者急増の英国で
見え始めた明るい兆し

 昨年末より新型コロナウイルスの感染者が急増、行動制限の強化を余儀なくされた英国であるが、足元では明るい動きがみられる。人口1万人当たりの新規感染者数は足元で1人を下回っており、スペインと並んで欧州でも突出した低水準(なお日本では2人弱)である。4月12日から行動制限が緩和され、パブなど一部店舗の営業も再開された。

 今年1月初め、英国ではケント州で検出された変異株の流行を防ぐ観点から3度目の都市封鎖が実施され、数多くの会社や店舗が閉鎖された。こうして人と人の接触を制限したことに加えて、宗教施設やスポーツ施設も会場として利用しながら、欧州でも抜きん出たスピードでワクチンの接種を進めたことが、足元の感染者の急減につながっているようだ。

 こうした「ワクチン独り勝ち」ともいえる英国の状況を評価した国際通貨基金(IMF)は、最新2021年4月の『世界経済見通し』で、特に2021年の英国の景気見通しを上方に改定、22年にかけて成長率が5%の高水準を維持するとの見方を示した。IMFが2年間にわたり5%成長を維持すると見通した国は、先進7ヵ国では英国だけである。

 行動制限が緩和されれば非製造業の稼働率が向上し、個人消費や建設投資といった内需が持ち上がるというのが、IMFが英国の景気予測を上方修正した理由であると考えられる。世界的なドル高の流れにもかかわらず英国のポンドは強含んでいるが、これもワクチン接種率の高さが好感された結果だという見方がある(図1参照)。

 2年連続で5%という成長力は確かに強いが、2022年でも実質GDPの水準はコロナ前の2019年を下回っている。そもそも英国は2020年に10%近くも実質GDPが減少しており、2年連続で5%の成長を維持しても水準は戻りきらないのである。前回1月の見通しより上方改定されたとはいえ、英国経済は突出して強くはない。