私が社会人になった当時の時代と職場がまさにそれで、お客さんとの飲み会ではとにかく最初はおつきあいでビールを注文しなければいけない。酒が飲めない私の場合、ゆっくりとしたペースで飲めばいいけれど、お客さんからビールを注がれるときにはコップを空にして差し出さなければならないといった「昭和ルール」が存在していました。

 いまから考えると信じられないかもしれませんが、当時の居酒屋のメニューはビール、日本酒とあって、あとはオレンジジュースぐらいしかありませんでした。ウーロン茶は80年代前半では、ピンクレディーのミーさんが「ダイエットのために飲んでいます」とか歌番組で紹介するようなレアアイテムだったのです。

 それから時代が変わり、居酒屋でもウーロン茶や緑茶、ノンアルコールカクテルなど多様な選択肢の中から好きなものを注文できるようになりました。お酒を飲む人にとってもチューハイやハイボールなど選択肢が増えました。しかし、マーケティング的な観点から言えば、市場に空白地帯があるのは明白です。

アサヒのマーケティング戦略が
「秀逸」であると言える理由

 私の立場から言えば、アルコールが飲める友人と一緒に酔いたい。これが隠れた顧客ニーズです。

 私は気持ち的には誘われたら飲み会は断りたくない性格です。しかし、弱点として2次会まではまずつきあうことができない。酒飲み仲間と私がノンアルコールビールでおつきあいしているうちに、仲間はどんどん出来上がっていって楽しくなっていきます。

 それでたいがい「2次会に行こう」ということになるのですが、その段階でテンションがまったく合わない。飲まない分、ついついおつまみを食べてしまうのでおなかもいっぱい。そして相手は何度同じ話を繰り返しても楽しいのですが、私はもう話のネタが切れているようなそんな状態で、仕方なく私だけいつも電車に乗って家に帰ります。

 さて、このような話をするとアサヒが発売したビアリーのような微アルコールカテゴリーという新しいカテゴリーには、論理的にはマーケットニーズがあるように思えます。そしてアサヒの発売方法をみると、明白にマーケティング戦略の定石に沿って製品を発売している気配を感じます。