西武鉄道広報部によれば「減便実施初日となった4月30日に、運休対象となった通勤急行の後続の急行列車に混雑が見られた」といい、国や東京都からの要請は「無理のない範囲で」とのことだったため、通常ダイヤに戻す判断をしたという。JR東日本も5月6日になって、一部の列車に乗車率180%を超える混雑が発生しているとして7日の減便を急遽、取りやめた。形ばかりの減便すらも取りやめる事業者が出たことで、内閣官房の思い付きは完全に瓦解した。

 元より、ゴールデンウイークの中日である4月30日はともかくとして、多くの職場では休み明けとなる5月6日、7日に減便を行うのは無理があった。政府や東京都からすれば5月6日、7日に追加で休暇を取ってもらい、人の流れを減らしたいという狙いがあったのだろうが、供給をしぼっても需要が減るわけではないのである。

『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』書影本連載の著者・枝久保達也さんの『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(青弓社)が好評発売中です

 昨年の1回目の緊急事態宣言時には、テレワークが急速に広まり、首都圏の鉄道利用者は最大7割程度減少した。ところが、今年1月の2回目の緊急事態宣言時には最大でも4割程度の減少にとどまり、今回も大幅には減っていない。鉄道利用者を減らしたいのであれば、テレワーク実施率を上げるなど、より効果的な誘導策があったはずだ。

 鉄道を巡っては気になる話も出てきた。これまで鉄道は密集しているが、会話をしないため密接ではない、あるいは換気がされているため密閉ではないとして、「3密」には当たらないとされてきた。

 ところが変異ウイルスの拡大により、3密でないところでもクラスターの発生が相次いでいるというのである。政府には「やっている感」を出すための対策ではなく、真に必要な対策を取るよう求めたい。