恵麻 「事業主の支配下って……それは会社じゃないとダメってことですか?」

カタリーナ 「いいえ、テレワークを行う労働者も事業場における勤務と同等に扱われるわ。会社が就業場所として自宅を定めているわけだから。ただ、私的行為が原因の場合は業務災害とは認められないわよ」

恵麻 「今回は明らかに仕事中のものです」

カタリーナ 「そうね。恵麻さんの場合、自宅が就業場所だから事業主の支配下にある点で業務遂行性を満たしているし、業務に関連する行為が原因でけがをしている点で業務起因性があるといえる。つまり、業務災害と認められる可能性が極めて高いわ。判断するのは、労働基準監督署になるけれど。そうなると、健康保険は使えないの」

恵麻 「えっ?普通に保険証を使って支払っちゃいました。まだしばらく通院しなくちゃいけないし、どうしたらいいんですか?」

カタリーナ 「そのクリニック、労災指定病院だったか覚えてる?」

恵麻 「えぇっと、看板に大きく『労災保険』とあったから、たぶんそうだと思います」

業務災害が原因で働けないときは
休業補償給付の申請も可能

カタリーナ

カタリーナ 「だったら、まず病院に連絡して労災保険を使うことを伝えることね。まだ時間がたっていないから、申請書類を提出すれば、支払った医療費を返金してもらえると思うわ。病院によって対応もさまざまだから、相談してみて」

恵麻 「わかりました。ということは、医療費は自分で負担しなくていいってことですか?」

カタリーナ 「そうよ。治療費はすべて労災保険でカバーされるから、心配しなくても大丈夫。これを『療養補償給付』っていうの。まず、給付請求書に災害の原因や発生状況など詳しく記入する必要があるわね。会社に事情を説明したら、書類を用意してくれると思うわ。労災保険指定医療機関の場合は、病院を経由して労働基準監督署に提出される仕組みになっているの」

恵麻 「早速、会社に伝えます。よかった~。在宅勤務だから仕事は何とかできるけど、出社だったら絶対通勤なんて無理ですから」

カタリーナ 「もし、業務災害が原因で働けないときは、休業中に給与が出ない代わりに休業4日目から『休業補償給付』の申請もできるのよ」

恵麻 「へぇ、結構手厚いんですね。なんだかちょっと賢くなった気分です」

カタリーナ 「まぁ、それはよかった。“けがの功名”かしら?(笑)」

恵麻 「やだ~、でもそうかも!だって、知らなければ高い医療費も自分で支払っていたわけだし。カタリーナ先生とも話すことができたし。転んでもただでは起きませんから~」

カタリーナ 「そうそう、その調子でがんばって!」