厚顔無恥、盗っ人猛々しい、開いた口が塞がらないとは、このことを言うのではないだろうか。AFP(フランス通信社)は米シンクタンクのアジア専門家の意見として、「中国は新型コロナウイルスの流行に乗じて台湾に圧力をかけたことが過去にもある」「本来政治と無関係であるべき人々の健康を、中国が継続して政治化していることは、驚くべきことである」とも報じている。

ワクチン接種を
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 3月3日、最初のワクチン11万7000回分が製造国の韓国から台湾に到着した。BNT製ではなく、英アストラゼネカ製であった。台湾が他国の妨害を恐れ、秘密裏に交渉を進め、搬送経路も伏せられていたと報道されている。台湾がどれだけ緊張感、危機感を持ってワクチン獲得に動いていたかが、ここからもうかがえる。

 そして、3月22日からようやく台湾でも正式にワクチンの接種が始まった。中央感染症指揮センターは、ワクチンの接種開始と同時に、接種後の健康状態を把握するためのシステム「Taiwan V-Watch」(以下、「Vシステム」)の運用をスタートさせた。

 ワクチンの接種を受けた人が「Vシステム」に、自分のデータを登録し、定期的に健康状態や症状を記録して行くシステムだ。接種後の1週間は毎日、その後は週に1回、月1回、半年1回の頻度になり、1年半の間、記録の追跡が続くという。回答内容によって、適切なアドバイスなども行ってくれる。トップページにはワクチンに対するさまざまな情報が掲載されている。さらに2度目のワクチン接種日の通知などもしてくれる。

 なお、この「Vシステム」のインストールは、強制ではなく任意だ。今のところ58.4%の人がこのアプリをインストールして、自己の経験した副反応などを報告している。今後このデータは複数のワクチンが採用され、接種人数が増えていくに連れ、それぞれのワクチンの副反応の状況を収集して、安全性と効果を分析し、ビッグデータとして活用されることは間違いない。

 さらに優れているのは、台湾政府がこのデータによる統計資料を定期的に一般公開している点だ。ワクチン接種から1週間以内にどんな症状(患部の痛み、倦怠感、筋肉痛、頭痛など)がどう表れるかなどの統計を知ることができる。また、10%の人が接種当日、仕事が十分にできない状態になっていることなども報告されている。