しかし、自分の部下に対しても、コンサルティング先の社員に対しても、こうした発言を私は一切しない。
なぜなら、自信や意欲、感謝の気持ちは前述したとおり、「持て」と言われたからといって持てるものではないからだ。
たとえば、「感謝しろ」と言われて「わかりました」と答えても、本当の感謝の気持ちは湧いてこない。
せいぜい口先で「ありがとうございます」と言うのがいいところだ。
自信や意欲だって、人から「持て」と言われて湧いてくるなら誰も苦労しない。
こうした気持ちが湧いてくるのは、コラムの第2回で紹介した「あたりまえ状態(無意識的有能状態)」になってからである。
絶対やらなくてはいけない「行動指標」
仕事には「行動指標」と「成果指標」という2つの指標がある。
行動指標というのは、できない理由がないもので、「期限」と「ノルマ」が設定される。
たとえば、2週間に1回開かれる会議の席で、「○○さんにアポイントを取っておいて」と言われたとする。
2週間後の会議で、「どうなった?」と尋ねられて、「やっていません」と答えたら、会議の参加者は全員、「そんなことはありえない」と思うだろう。
このように、行動指標というのは誰が見てもできない理由はないこと、努力次第で達成できること、社会人として絶対にやらなくてはいけないことを指す。
営業の訪問件数も行動指標の一つだし、見積書や会議資料の作成なども行動指標に相当する。
“絶対達成”できるかわからない「成果指標」
一方、成果指標というのは、一所懸命にやったからといって必ずしも達成できるとはかぎらない指標だ。
たとえば、どんなに多くのお客様を訪問しても、目標予算が達成できるとはかぎらない。だから目標予算は成果指標ということになる。
行動指標と成果指標のうち、最初に達成するのは行動指標だ。
行動指標を達成し続けると、多くの場合は意欲が湧いてくるはずだ。
いままではできなかったことを絶対にやりきるという経験を重ね、目標を達成するのはあたりまえだ、と思えるようになれば、達成感を味わうことができる。
それまで10時間の中で5回しかできなかったことが8回できるようになれば、「やってみるもんだな」と思うことだろう。
その姿を見ていた周囲の人たちだって、「ずいぶんがんばっているじゃないか。やればできるな」と評価し、努力を認めてくれるものだ。
そうして達成感を味わい、周囲の人たちから承認されることで、「もっとがんばろう」という意欲が湧いてくる。
それと同時に、作業も自然と効率化する。勉強も自発的にするようになるだろう。
そのように心底思えるようになるには、拙著新刊『絶対達成マインドのつくり方』に書いたとおり、目安として8か月くらいはかかるかもしれない。
しかし、それまでには過去にできないと思えたことも、意外とできるものだと受け止められるようになる。
ただし、行動指標を達成したとしても、必ずしも成果が出るというわけではない。自分で決めたことは「やりきる」という習慣が手に入る、ということだ。
実際に、やらなくてはいけないこと、できない理由がないことをきっちりやっていても、残念ながら成果が出るとはかぎらない。
たとえば、営業の場合、お客様の訪問件数という行動指標を達成していても、目標予算という成果指標を達成するとはかぎらない。
お客様の訪問件数に比例して売上が上がる保証はない。